基礎体力研究所

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第43回談話会:2011年10月19日

「乳幼児のふり遊び:その発達的・進化的意義」
…中道直子

台風のために延期になっていた,基礎体力研究所の第43回談話会が10月19日に行われました.今回は,「発達心理学」がご専門の中道直子先生に「乳幼児のふり遊び:その発達的・進化的意義」と題してお話をして頂きました.中道先生は,「乳幼児のふり遊びにおける社会認知的能力の発達」を研究テーマとされています.「ふり遊び」とは,空のコップからジュースを飲む「ふり」をしたり,積み木を車に見立てたりする遊びで,ヒトに近い霊長類にもみられますが,ふり遊びを他者と共有して楽しむことができるのはヒトだけだそうです.また,子どもは遊びを通して経験し,考え,それぞれ何かを学んでいます.つまり,子どもにとって「遊び」は「学び」とほぼ同じ意味なのです.
今回の談話会では,ヒトの乳幼児が他者(特に母親)とふり遊びを楽しめる理由を,ふり遊びの発達的・進化的意義の2つの視点から考察して頂きました.ふり遊びを研究している研究者達は,「なぜ,ヒトの子どもは幼い頃から,母親と一緒にふり遊びを楽しむことができるのか?」ということに関心を持っています.その考え方の一つには,子どもが優れた知的能力を持っていることが挙げられます.さらに最近では,母親が子どもをふり遊びの世界に上手に導いてあげているという考え方が主となってきているとのことです.
トドラー(乳幼児)が母親のふりシグナルを理解するには,母親の頻繁で長い微笑,子どもへの長時間の注視,そして効果音の多様といったふりシグナルを子どもに与えることが重要となります.そして中道先生によれば,母親のふりシグナルの出し方の違いがその後のトドラーのふり理解に及ぼす影響は,母親が頻繁な微笑と多様な効果音を用いてふりシグナルを送ることでトドラーのふり理解を高めるとのことです.さらに,見知らぬ他者によるふりシグナルでもトドラーは理解することができると考えられるそうです.中道先生が行われた研究からふり遊びの意義をまとめると,①進化的意義としては,ヒトの母親が「ふりシグナル」によってトドラーをふり遊びの世界へ上手に導くことができるのは,ヒトに特有な教育システム(Natural pedagogy)が働いている一例であること.そして②発達的意義としては,ヒトの子どもは,遊びを通して,他者の行動の中にあるメッセージを理解したり,自らがメッセージを送る方法を学んだりしているのではないかと考えられるとまとめて下さいました.
当日は大変お忙しい中,様々な分野の先生方そして大学院生が参加して下さり,活発な議論が行われました.大変興味深いお話をして下さった中道先生ならびにご参加下さいました先生,大学院生の皆様ありがとうございました.

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