基礎体力研究所

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第41回談話会:2010年7月21日

「スポーツ選手がストレスについて考えることの意義」
…佐々木万丈

基礎体力研究所の第41回談話会が7月21日に行われました。

今回は、「体育心理学・スポーツ心理学」がご専門の佐々木万丈先生に「スポーツ選手がストレスについて考えることの意義」と題してスポーツ場面での様々なストレスの概論、そして各論をわかりやすくお話して頂きました。

佐々木先生は、2009年4月に本学に着任されました。また、「運動・スポーツ活動における心理社会的ストレスのマネジメント」を研究課題に挙げ、①女子大ならではの女性アスリートを対象とした女子スポーツ選手の心理、②動機付け理論をベースとした所属感とパフォーマンス、そして③スポーツ場面で学んだものをどのように日常場面に生かすかといった心理社会的スキルの般化過程といったことに興味・関心をお持ちとのことです。

お話の内容は以下のようなものでした。

スポーツ場面におけるストレスは、emotional(不安、怒り、情動的)、Physical(けが、運動の制御不能)、Physiological(心拍数の増加)、Interpersonal(人との関わり)、Acute(急な出番、腹痛)そしてChronic(チーム内の人間関係)といった様々な要因が複合的に合わさって症状が起こってきます。また、ストレスには「刺激に対する反応」という特定的な見方が難しいという特徴があるとのことです。「ストレス(stress)」という言葉は1930年代後半に生理学者セリエ(Sehye. H)によって定義されました。セリエはストレスを外的な刺激に対して反発するのではなく受け入れる「adaptive(適応)」とう言葉を用いて定義しましたが、このことは以降の心理学研究にとってとても重要なことになるそうです。その後、精神医学の分野でも用いられるようになりホームズ(Holmes)とラーエ(Rahe)による「Social Readjustment Rating Scale(社会最適度評価尺度)」は大変有名であり、セリエの「ストレス」に対する考え方は心理的ストレス研究の発展に大きく貢献し、現在では心理学者ラザルス(Lazarus R. S.)らの認知的評価理論に基づいて心理学的ストレス研究が行われているとのことです。ラザルスは個人によって刺激に対する反応が異なることを指摘し、個人ごとのストレスに対する意味付けに応じて認知的評価、再評価そして対処(コーピング)を考えることを提唱しました。佐々木先生は、ラザルスの考えを基に体育授業において中傷・干渉場面を設定しそこでの認知的評価そしてコーピングの選択方法によってその後のストレス状況に影響を及ぼすことを実践研究されていらっしゃいます。

お話の最後に認知的評価理論から考えるスポーツ選手がストレスに向き合う意義として、①自己理解力・自己統御力の向上、②ピークパフォーマンスのための判断と行動の多様性、③問題の具体的修正そしてそれらが④チームパフォーマンスの向上につながるとまとめて下さいました。スポーツ心理学の奥深さを大変興味深く聞かせて頂きました。佐々木先生、そしてご参加いただきました教職員・学生の皆様ありがとうございました。

 

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