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スポーツの「これまで」を通して「いま」を考える

都筑 真(スポーツ史)

私の専門分野は、主に文字史料を手がかりとしてスポーツの「これまで」を解明していくスポーツ史学です。その中でも大学院生の頃から取り組んできたのが、近代スポーツに対する抵抗の歴史に関する研究です。

近代スポーツはイギリスの植民地拡大と深く関わって伝播していくとともに、イギリスの影響を受けた人々が自国に導入するなどして世界各地に普及していきますが、近代スポーツの伝播は、各地域における受容、各地域独自の身体運動文化がスポーツ化していくといった一定方向的なものではありませんでした。

近代スポーツが世界各地に伝播し、受容されていく過程では、各地域独自の身体運動文化との摩擦も生じました。最も抵抗したのは、ドイツで「トゥルネン」と呼ばれる活動を行う者たちであったとされており、彼らは19世紀末から約半世紀もの間、近代スポーツに対して抵抗していきます。

「トゥルネン」とは、19世紀初頭に創始された、器械体操や徒手体操を中心とするドイツ固有の身体運動文化であり、体操以外にも走・跳・投の運動、水泳、球技など多様な運動種目を行う活動でした。また「トゥルネン」では、こうした身体運動を行うだけでなく、国民意識や民族意識の涵養をも目的としていました。

ドイツで「トゥルネン」を行う者たちの近代スポーツに対する抵抗運動はどのように展開していったのか、そして抵抗運動はどのように収束していったのか。こうした歴史の解明に取り組んでいます。

近代スポーツに対する抵抗の歴史が、現在進行している近代スポーツのグローバル化の問題、近代スポーツと民族スポーツの共生の問題を考える上で有益であるように、スポーツの「これまで」は、スポーツの「いま」を考える上で多くの示唆を与えてくれます。今後もスポーツの「これまで」を紐解きながら、スポーツの「いま」を考えていきたいと思います。

1818年頃のトゥルネン場の様子

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