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お知らせ 講演会「東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたりスポーツに関わるということ」を開催

2018.12.01

2018年11月1日(木)に、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会大会準備運営第一局次長の 森 泰夫 氏を講師としてお招きして、「東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたりスポーツに関わるということ」と題した講演会を開催いたしました。

講演会「東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたりスポーツに関わるということ」講師:森 泰夫 氏

2020年に東京オリンピック・パラリンピックを目前に控え、日々のあらゆる場面でそのことが取り上げられるようになってきました。そのような中で、今回この日本女子体育大学で私がこのような講演依頼を引き受けさせて頂いたのは、「女子」の「体育大学」であったからであります。私は2020年の後にスポーツを支えていくのは、スポーツをやっていた経験を持った「女性」だと思っています。これから日本のスポーツを支えていく立場になっていくと思われる皆さんに、お話をしてみたいと思いました。今日は、東京オリンピック・パラリンピックにむけて、我々組織委員会が行っている取り組みについてお話させて頂くだけでなく、「スポーツに関わるということはどんなことがあるのだろう?」ということを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

1.東京オリンピック・パラリンピックを前にして

東京オリンピック・パラリンピック(以下:東京オリ・パラ)を前にして、スポーツに関わる方々が主にどのようなことを行っているのかというと、3つあります。1つ目は、日本の代表選手としての出場・活躍を目指すということで、国や文科省、JOC、JPC、競技団体がその強化に力を入れています。2つ目は、オリ・パラに関わる様々なムーブメント事業が行われているということです。例えば、今回のこの講演会もその一つですね。子どもたちに向けたもの、事前合宿、聖火リレー事業など様々なことを行っています。最後の3つ目は、東京オリ・パラを契機にして、その後、これからの日本に繋がるような取り組みを、今の段階から見据えて行う、考えるということです。わたしはこれが非常に重要だと思っています。まさしく、この部分を皆さんがいろいろな形で考え、取り組んでいって欲しいと考えています。

2.東京2020オリンピック・パラリンピックの概要

東京オリ・パラの内容について、少し復習をしてみましょう。東京オリンピックは2020年の7月24日から8月9日の期間で、33の競技を行います。パラリンピックは8月25日から9月6日の期間で、22の競技を行います。大変な点はどのようなところにあるのでしょう。東京オリ・パラは招致の時にはオリンピックパークを持たず、既存施設を使うという、ということで開催することになっています。ところが、会場が分散するとその分の様々な諸問題が発生します。選手村からの会場へのコントロールから始まり、輸送の様々な課題をどうクリアしていくかという非常に難しい課題が出てきています。他にも様々な課題が会場ごとに出てくることになります。まさしく、「計画」から「実行」というものに移行する部分での想定され得ないことが大きくある巨大イベントの難しさを今痛感しています。
東京オリ・パラに向けたスケジュールですが、2013年に開催都市が決定し、そこから7年間で大会開催の準備ということになります。今日は2018年11月1日ですのであと1年半年強で開会となります。もうすぐです。2019年7月からはテストイベントが本格的に始まりますので、大会準備としては19年から20年に向けて走り続けるということになります。組織委員会の機能についてですが、後半でお話しすることになるスポーツイベントをどのように事業開催するのかということとも関わってきます。IOCは大会運営にあたり52部門で行う基本形を持っており、それに即しながら、これに各競技数のマトリックスをかけて運営を行っていっています。
 昨今のスポーツの大型イベントは、マーケティングと切っても切り離せない関係になっています。オリンピックというのは、スポンサー、メディアが大きく関わる象徴的な大会だと言えます。IOCへオリンピックに協賛しているというのが、パートナー企業ですが、この東京2020スポンサーというのが東京の組織委員会の予算の骨格になる部分です。
 ボランティアについてですが、東京オリ・パラのボランティアは募集を開始し始めました。どのような仕事をするのかというと、例えば、会場などで観客を案内したり、選手の衣服を運んだりするような競技に近いエリアでサポートするもの、ドーピングのシャペロンといって選手をガイドするなどさまざまな役割があります。皆さんもぜひ興味があれば参加してほしいなと思います。ボランティア活動の重要性について資料に書いていますが、大会を運営している側から何が重要かということをお話しします。
一言で言えば、「その大会の印象というのはボランティアによって決まる」ということです。なぜなら大会期間中、観客の人々が基本的に直接的に接するのはボランティアだからです。ボランティアの対応が良いと、「この国、この大会、いいな」と思うのです。人と接する上で何が重要かというと、それはテクニックではなくて一生懸命かどうかということです。例えば、困っている人がいたらその人についてあげたり、言葉が通じなくても一生懸命関わろうとしたりすることなどです。これは非常に印象が良いことなのです。前回のリオデジャネイロ・オリンピックを開催したブラジルというと、陽気なイメージを抱くかと思いますが、実際にも国民はとにかく明るいのです。また、失敗しても明るいため、案内されて「あ!違った!」ということがあったとしても印象が良い。なので、相手と接する際の笑顔はとても大切なものだなと感じました。そのようなボランティアの人の振る舞いは、その国や大会のイメージを表すのだということを改めて実感しています。なお、東京オリンピックのボランティアは今年の8月から募集を開始しており、研修の実施は来年を予定しています。

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3.スポーツに関わるということ

おそらく皆さんは、これまでスポーツを「する」立場であったと思います。それが、今後どうなっていくでしょうか。資料にもある通り、スポーツの関わりは「する」「みる」「支える」の3つあると考えています。これはどういうことかというと、子どもの頃に何かのきっかけでスポーツを体験するとします。そのままトップ選手として成功する人もいるでしょうし、指導者になる人もいれば、審判をするという人もいると思います。たとえスポーツから離れたとしてもメディアの職業に就かれたり、スポンサーとなって関わったりすることがあると思います。よく若い人から「どのようにしたらスポーツに関われますか?」という質問を受けるのですが、「一番みんなをハッピーにするのは、早く偉くなり、会社の社長になってスポンサーをやってもらうことだ(笑)」と話しています。これが、ある意味で最もスポーツに貢献する関わり方になりますが、それだけではなくいろいろな関わり方がスポーツにはあります。日本代表やトレーナー、チームスタッフ、監督・コーチなどになるというのがありますが決してそれだけではないのです。医者としてスポーツドクターとして関わる、弁護士としてスポーツに関わり法律の面で協力するなどがあります。大会運営のビジネス的側面で関わる、広告代理店の立場で関わるというのもあります。教育の側面からでは、学校や部活動、指導では監督やコーチという立場で関わることもあります。家庭では子供の試合の送迎や応援することや、観客として試合を観戦すること等もスポーツを支えていることになります。本当に様々なことがあります。ボランティア的な要素を多く含んでスポーツに関わるというものもあります。ですから、皆さんよくスポーツに関わるというとイメージするのは「選手になる」「指導者になる」「スポーツイベントを企画する」などの直接的なところがスポーツに関わるということだと思っている人が多いと思いますが、実際にはスポーツは大変広い範囲の関わり方があるので、どこで皆さんがスポーツに関わることになるかは、ほんとうに分からないと思います。

4.スポーツに関わる実例

次に実例として、まず1つ目にスポーツボランティアを取り上げてお話をしたいと思います。まずボランティアについてですが、最近東京オリ・パラを契機にボランティアは注目されてきています。いろいろな定義づけがされると思いますが、大きく分けるとこの3つです。それは、個人の自由意志ということ、報酬を目的としないこと、さらに専門能力や時間を提供するということです。基本的にはボランティアとは、自発的な活動をすることです。皆さんの前にボランティアという話がくると、すぐオリンピック・パラリンピックになってしまうと思います。しかし、ボランティアというものは、日常的にスポーツの分野ではたくさん行っている方がいらっしゃいます。なかでも、スポーツの指導や大会の審判、地域のスポーツイベントを支えるといったことは、まさに日常的に行われているのです。反対に、大規模なスポーツイベントの運営でのボランティアは、非日常であるというように捉えられます。様々なボランティアの人々がどれくらいいるのかということを調べてみました。陸上競技であれば、審判をしている方は4万人弱います。大きい大会は、いくらか日当が出たりするのですが、ボランティアだとお弁当とお菓子と交通費だけという感じで、それでもしていただいている方がこれほどいます。そして、大会がどれくらいあるのか、ということも調べました。これは、結構な数がありました。陸上競技だけで年間4,659大会あります。こうした方々のおかげで我々がスポーツを出来ているということになります。具体的な大きな大会では、オリンピック・パラリンピックは9万人、国体は1万3千人、箱根駅伝は2千8百人の人々が、ボランティアとして関わっています。
 ボランティアは今後、とりわけ日常的な活動のものは特に非常に難しい壁にぶち当たっていくと思います。人々の時間的な余裕のなさや、教員の仕事の忙しさ、地域のつながりの希薄化といった社会的な環境の変化が課題として挙げられると予想されます。また、高齢化も著しく進んでいます。こういった問題をどう解決していくかということが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのボランティアだけでなく、これからの全てのボランティア活動の課題であると考えられます。
実例として2つ目にスポーツイベントについて取り上げたいと思いますが、この中で将来スポーツイベントの企画、運営に携わりたいと考えている人はいますか?
スポーツイベントは大きく分けて2つから成り立っています。その一つ目は競技運営です。これは皆さんもこれまでの競技生活の中で、大会の補助員や手伝いをしてきているかと思います。ここにあげられているような記録の測定や用器具の準備、プログラムの構成などのイメージはつくかと思います。二つ目は大会運営で、最もその重要度が高いのがオリンピックです。マーケティング的なスポンサーシップから始まり、観客に情報を発信するプロモーション、ホスピタリティー、オペレーション、そしてスポーツプレゼンテーションなどさまざまな役割があります。
スポーツイベントで起こるさまざまなリスクに触れたいと思います。なぜこのようなことをお話しするかというと、スポーツイベントの成功のベースは事故を起こさないことだからです。スポーツイベントは、事故が起きないことの上に様々なものがあるということです。事故を起こさない上に、良い結果、良い勝負、笑顔が加われば、大成功ということになります。事故が起こる要因は、主に天災・人災・特殊事故の3つに分けられます。これら3つのリスクが起きた場合を想定しながら準備をしていくことになります。

5.スポーツを支えるということ

スポーツを支えるという視点から、スポーツの各種競技団体で働くということがどういうことかについてお話ししたいと思います。最近スポーツ界ではいろいろな不祥事が起こり、私も非常に心を痛めているところであります。スポーツの各種競技団体で働くということは非常に大変なことです。しかし、その分のやりがいもあり素晴らしい仕事であると思います。そこで働く際に、どのようなことが大切でしょうか。
1つ目は様々な「経験値」をもっていることの重要性があります。なぜなら、この仕事が本来とても難しい事業分野であるからです。先ほどイベント事業の話をしたと思いますが、競技団体がイベントをやるのであれば、これを全て理解し、構想から企画から、交渉からそして運営まで一気通貫として遂行をしていくことになります。ビジネスとしても確立していかなければいけません。主催団体としての交渉、放映権の交渉、スポンサービジネス、代理店との交渉、どれもなかなか難易度が高いものばかりです。なかなかまだまだできていない現状もあります。ゆくゆくはぜひ皆さんも、そのようなことを組織の中で学ぶのでも良いですし、外から学ぶのでも良いので、このようなスポーツの各種競技団体で活躍してほしいと思います。
2つ目は、ミッションや社会貢献への「思い」です。まさしく、今不祥事を起こしている各種団体は、こういったことを考えていかなければならないと思います。また、このような団体で働く際には、教育や地域とも深く関わります。教育にとってはどうなのか、地域にはどのような影響を与えるのかなどということを考えていくようになります。ですから、そういったことも考えながらスポーツの連盟や協会に就職を考えていただきたいなと思います。

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6.おわりに

最後に皆さんに一つだけお伝えしたいことがあります。これまで皆さんにいろいろ難しいお話をしてしまいましたが、私が今思い描いている目標は3つあります。
1つ目は、2020東京オリ・パラの成功です。これは私の職業的な立場上、絶対に成功させなければならないものですね。
2つ目は、スポーツを社会プラットフォームにおいて、より重要な位置づけにしていくということです。これは、「スポーツってなくちゃいけないよね」と、世の中の人々が思うようにしていきたいということです。こういったことをぜひ若い人たちと一緒に、創っていきたいと思います。
そして、「そのためには」ということで3つ目ですが、この2020東京オリ・パラをきっかけにして、よりスポーツ側の人材をしっかり育成して、スポーツ界に関わってもらうようにしていきたいなと思います。こういった部分のきっかけとしては、2020東京オリ・パラに少しでも関わるということです。これはボランティアでなくてもアルバイトでもいいですし、競技団体の一員として関わってもいいですし、もちろん選手として出るのが一番いいかと思うのですが...。ぜひ、どんな形であれ関わってほしいと思います。今回のような自国でオリンピックが開催される機会は、今後、ほとんどないと思います。そして、そこでの経験というのはかけがえのないものになると思います。また、とりわけ女性がスポーツに関わるということが、今後重要になってくると思いますので、ぜひ皆さんも2020東京オリ・パラに関わっていただければと思います。
 そして、このことは私事ですが、私が転職をしたとき、何を考えたかということです。
1つ目は、自分が社会にどのような役立ち方をするのかということで、私はスポーツでその成果を出していくことが、大きな役立ちになるのではないかと考えました。
2つ目はオファーされるということで、人から来てくれないかといわれることは有難いことで、真剣に考えるきかっけになりました。
3つ目は、スポーツで様々な方にお世話になったので、その方々への恩返しです。これらのことを大切にして、これまで邁進してきました。
一人だと、なかなか物事を大きく変えていくことはできないですが、素直な前向きな気持ちと熱意で物事に取り組んでいくと、サポートしてくれる方々が居てくれます。ですから、ぜひ皆さん今後スポーツに関わらなくても、そういう気持ちで様々なことを行ってもらえたらなと思います。社会に出て、少しずつ階段を上っていくと孤独になります。その時に、支えてくれるのは、高校やら大学やら、一緒にスポーツやその他で関わった、付き合った仲間だと思います。そのような場面でまた一緒に協力してもらう、協力してあげることがあればいいなと思います。これからの社会は、1つの突き詰めた経験と多様性が重要になってくると思います。皆さんは、今現在、あるいは中学・高校時に何らかのスポーツを一生懸命やっていたと思います。「そんなの皆やっているよ」と思うかもしれませんが、社会に出てみると意外にもそのような経験を持つ人は少ないことに気づかされました。このようなことを考えると、もう皆さんはすでに1個、その経験があるので、これから多様な経験をしていくことで、社会で非常に活躍ができると思います。
 最後に、私は「ありえるかもしれない人生」という言葉が大好きです。中学・高校の時にまさか自分がオリンピック・パラリンピックの運営を統括するなんて、当然思っていませんでした。一度、会社に就職した時もスポーツに関わるなんて思ってもいませんでした。経験のある陸上競技に関わるとしても、まさかこんなポジションで関わるとは思っていませんでした。だから人生何があるか分からないというか「ありえるかもしれない」ということがいくらでもあるなと私は思っています。ですので、皆さんも、そんな「ありえるかもしれない人生」に向かってチャレンジをしてほしいなと強く思っています。

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