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スポーツ・サービス系
スポーツプロモーター

松田 ゆきえ(2009年度・スポーツ科学専攻卒)

総合スポーツ用品メーカー


トップアスリートをサポートするのはけっこう大変だ。

松田さんは、大学時代は陸上部で幅跳びをやっていました。スポーツ関係の仕事がしたいと思い、希望通りスポーツ用品メーカーに勤めることができました。ただ、自分が思っていた仕事のイメージとは少し違っていたようです。
<2012.05収録>

スポーツ用品メーカーのどんなところで働いているの?

スポーツプロモーション部というところで働いています。その中に、水泳や野球、フィギアスケート、柔道など、いろんな競技の課があって、私は陸上競技・ランニング課というところにいます。

どんな仕事ですか?

「トップ販促」と言って、直接の営業とは違ったプロモーション活動をしています。将来オリンピックレベルになるような選手を獲得して活動のバックアップをしたり、用品やウエアを提供する仕事です。

うちの会社にはオリンピックに出るような選手が正社員として所属しています。そういう選手は記録を出すことが仕事なので、普段は競技活動に専念しています。そういう活動のマネージメントもします。

オリンピック選手以外にも、全国大会で優勝するようなレベルの高い選手のサポートもしています。大会に出る時はチームとしてスポンサードして、ウエアやシューズを提供したりしています。

直接の売り上げには結びつかない部署ですが、トップアスリートに自社製品のウエアーやシューズを使ってもらうことで、その商品を使ってみたいという人を増やし、販売促進につなげていくんです。選手のインタビューの時などにブランドロゴがテレビに映ったりしますよね。そういう露出を多くすることで広告効果も狙っています。

また、選手達が使った商品の感想を企画部門にフィードバックして、商品開発に役立てたりもしています。

陸上競技・ランニング課はどういうサポートをしているの?

うちの課には8人いて、それぞれ持っている種目もばらばらですが、どちらかと言えば長距離系が多いですね。駅伝に参加している実業団や大学の選手に、シューズやウエアを使ってもらったり、活動のサポートをしたりしています。

私の担当は、長距離とトラックアンドフィールドです。ちなみにニチジョの陸上部は、私が担当しています。それ以外にも、長距離の実業団チームをいくつか持っています。ニチジョの場合は、毎年新入生の時期にウエアーの購入があるので、2月くらいから手配して準備したり、大会の時にウエアーを送ったり、足りないものがあれば持っていったりしています。

そういうことをしながら、わたし目線で有望と思う選手を見つけてアピローチしていきます。選手がどういう風に成長するかはわからないんですが、有力な選手を獲得するのも仕事のひとつなので。

毎日何をやっているの?

普段はパソコンに向かって、商品の手配をしたり、メールをうったり、会議の資料を作ったり。あとは、大会に合わせて商品を梱包して出荷したり、倉庫で在庫の整理をしたりしています。

大会の時は外出することもあります。私が担当しているチームの大会には必ず行きます。昨日も4大学の対抗戦があって、ニチジョが出たので行ってきました。日本選手権やグランプリシリーズなど、トップアスリートが出る大会には必ず行っています。

そういう大会で、自分が担当している選手がいればサポートしたり、監督やコーチに挨拶したりします。他に、選手はなにを履いているか、他社はどうなのかとか、シェアの調査もします。

ニチジョ生にとってはかなりやりたい職業のひとつですね?

私もそう思っていました。この部署は外から見たら華やかに見えるんです。でも、入ってみたら全然違っていて、いろんな大会に合わせて商品を送ったりしなくてはいけないので、実際は毎日ダンボールばかり運んでいたりするんですよ(笑)。

とにかく人と密接に関わる仕事なので、ネットワークやコミュニケーションがかなり重要です。知っている人が多ければ多いほど、いろんな情報を得られるし、いろんな人を紹介してもらえますから。

選手に対してはかなり気を遣います。獲得した選手が競合他社に取られないようにというプレッシャーもあり、この選手は絶対離したくないという人に対しては、「これでもか」というくらいアプローチしていきます。接待みたいなこともしなくてはいけません。

正直、私はそういうのはあまり得意じゃないので、ちょっと気が重いというか「うーん...。」と思っちゃうんですけどね。「自分に果たしてできるのか?」と思いながら、今もやっています。

今の部署を最初から希望していたのですか?

いいえ。売り場を希望していたんですが、面接の時に「陸上に関われればどこでもいいです。」と言ったら、ここになりました。たぶん、この部署の席が空いていたんでしょうね。

大学時代は?

走り幅跳びをやっていました。小学生の時、いい記録が出てそれ以来、陸上にハマってしまって。ニチジョへは、陸上部に入ろうと思って来ました。大学時代は部活が全てで、ほんとに陸上しかやってこなかったと思います。実家は福島で一人暮しなので、部活が終わったらコンビニやたいやき屋さんでアルバイトしていました。

3年生になってシュウカツが始まり、周りにもシュウカツを一所懸命やっていた子が多くて、一緒に頑張ろうみたいな感じでやっていました。キャリアセンターの人に、面接の練習をしてもらったり、エントリーシートを見てもらったりしていました。

やっぱりスポーツ系に進みたかったので、主だったスポーツ用品メーカーは全部受けました。でも中々うまくいきませんでした。エントリーシートの段階で落ちたり、面接の感触は良くてもSPIが駄目だったり...。

スポーツ用品販売店も受けました。そっちの方は最終面接の手前で落ちてしまいました。飲食業界にも興味があって、コーヒーが好きだったのでコーヒー飲料メーカーも受けました。そこは書類は通ったんですが面接で落ちました。

結局、ほかは全部落ちて、受かったのは今の会社だけです。

どうして受かったと思いますか?

わからないです。何も特別なことはやっていないんですけどね。普通にエントリーシートを書いて、面接を2回受け、テストを受けました。

集団面接では「最後まで頑張ったことはなんですか?」というお題があって、それについてひとり1分くらいずつ5人でお話しました。私の他には、テニス部とか野球部の人がいて、陸上部は私だけでした。最終面接では、「このメーカーが好きで、自分も使っていました。」っていうのをアピールしました。

子どものころに始めたことが、仕事まで決めちゃったんだね。

まあ、それしかなかったんですけどね。他のことをやろうとは全然思わなかった...。

会社に入って、アスリートからサポートする立場になってどうですか?

自分の競技は、やるべきことはやって終わったので燃焼しました。怪我もして、もともとやめるつもりで、これからはサポートする立場でやっていこうと思っていたので、意識的には切り替えられていると思います。それにあんなに苦しい練習はもうやりたくないですよ。冬はひたすら走りこんだりしてきつかったなー。今思い出すだけで、よくやったなと思います。

選手への対応のしかたとか接し方とかはどうやって学んだの?

先輩に同行して、選手とのやりとりを聞きながら、こういうふうにやるんだと学びました。今までは教えてもらうばかりでしたが、最近は、自分なりにこうやっていきたいって考えられるようになってきました。まだ3年目なので、自分のやりたいことを全部やれるわけじゃないんですが。

今の仕事で楽しいことはどんなこと?

今はひとりで外出する時がいちばん楽しいかな(笑)。自分の担当しているところやニチジョにひとりで行って、選手や先生といろいろお話したりしている時は楽しいですよ。

あと、選手と一緒に商品を作っていくのは、楽しいと思います。私はまだメディアに出てくるような選手を持っていないので、それがどういうものか、先輩の話でしか知らないんですけど。選手の話を開発の人にフィードバックしたり、選手やクラフトマンと、ここがどうだとかいう話をしながら一緒に作っていったり。

トップアスリートを巡って他の企業と争うこともある?

選手のときもありますし、チーム全体の時もあります。たとえば、選手が怪我したタイミングとかで、他社が「これはいてみなよ」って言ってきて、それで記録出しちゃったら、「こっちがいいです。」ってなっちゃうような世界なので。そういう時にどうフォローしていくかが大事です。

そういうことを気にしながらやっていなかくてはいけないシビアな部署です。いつ選手の気が変わるかわからないので、競合他社に隙を与えないようにしなきゃいけません。

それはチームにも同じことが言えて、監督とかコーチとの信頼関係が特に大事です。月に何回か連絡を取るとか、そういう細かいことが信頼関係を強化していきます。だから定期的に訪問して話したりするのも重要な仕事のひとつなんです。

ニチジョ陸上部はOGだから安心?

この業界、ニチジョのOGは多いんです(笑)。競合他社の同じ部署にもニチジョの先輩がいます。ニチジョの陸上部は、私の下の代からうちの商品に変わったんですけど、それは私が入る前に会社の先輩がやってくれた仕事です。せっかくやってくれたのに、それをひっくり返されるわけにはいかないじゃないですか。

先輩後輩を超えて、企業同士で戦う?

ウーン、でも、学生時代より全然コミュニケーション取っていますよ。学生の時は恐縮して話せなかったんですけど、会社に入ってからはいろんな大会で会うので良くお話します。でもやっぱり仕事上、ゆずれないところは出てくるので、そこは先輩でも気をつけていますけど。

ライバル企業には、お金で選手を取っていく企業もあります。ウン百万円もだして、プロモーション効果があるスター選手やチームを狙いうちで契約するんです。うちはマネーゲームはやらないという理念があるので、そういうのには加わらないんですが。

長距離の人にとってシューズは命だからこだわりがあるでしょ。

ありますね。「履いて走った人じゃないとわからない。その感覚をわかってくれ。」みたいな。自分は長距離出身じゃないので、そこがけっこう難しいんです。商品に詳しくないとだめだし、別注対応と言って普通のシューズにちょっと加工をするとか、そういうモノへのこだわりや知識も必要です。

サポートしていくのに大切なことは何でしょう?

商品知識は必要です。商品に詳しければ詳しいほど、選手への対応の幅は広がりますから。このシューズは練習用、このシューズは試合用とか、長い距離(マラソン)を走るとか、短い距離を速く走るとか、練習や試合の用途で変わってくるので、それに関してはフットアドバイザリースタッフと言う資格を取ったりもします。

モノに対する知識もですけど、それ以上に大切なのは、選手の気持ちを汲み取れるかです。マラソン選手の場合、シューズにこだわる人はほとんど男子です。女子はあまりこだわらない。むしろ監督との関係が大切になってきます。

製品のことは先輩に聞いたりすればわかるけど、その人が何を考えているのか、何を望んでいるのかっていうのは自分で知らないといけない。

「足のここが当たって痛い。」とか、「ここは、こういう時にこうなる。」とか、そういうのをどれだけ汲み取れるか、選手がどうしたいのか、自分が選手の気持ちに立って考えられるかどうかが重要です。そこがわからないと、製品にもフィードバックできないので。

勤務時間やお休みは?

基本は9時半から6時までですけど、仕事がたまっちゃうと、7時、8時くらいまでは会社にいます。大会の時は土日でも出勤しますよ。振り替え休暇は取れますが。年末年始は箱根駅伝があるので、休暇はありません。うちが特別協賛をしている大会のひとつなので、一番忙しい時期です。

クリスマスの時期も、全国高校駅伝で京都に行っています。男子の長距離は女子よりもシェアが広いので、必ず押さえておかなくてはいけない大会なんです。

オフの時はどうやって過ごしている?

取りあえず、陸上の話からは離れたいですね(笑)。職場では朝っぱらから、「どこの選手がいい。」とか、「あの選手が来ている。」とか、「どこの実業団に行く。」とか、そういう話が毎日行き交っています。ご飯を食べに行く時も、「あの選手がどうした。こうした。」とか。ずっとそういう話を聞いていると、「もうやめてー。」ってなっちゃう(笑)。

気分転換には何をやるの?

特別なことじゃなくて、音楽聞いたり、You Tubeをみたり、映画観たりです。

あと、自分もたまに走りますよ。母親が趣味で走っているので、小さな大会に申し込んで一緒に出たりしています。まだハーフまでしか走ったことはないですけど。母親は全然運動に興味がなかったのに、高橋尚子を見て「あんな風に走りたい。」って、走ってみたらはまっちゃって。背も低いし痩せているので、長距離向きなんです。私より全然速いですよ。私は長く走ることは得意じゃないので、自分のペースで楽しみながらやっています。

これからはどうしていきたい?

自分の担当するチームを増やしたいですね。箱根駅伝に出ていた選手が課にいるんですが、長距離に関してはやっぱりそういう人のほうが良く知っています。だからそっちの方はおまかせして、私はトラックアンドフィールドのほうをもっとやっていきたいんです。

今までは先輩がやっていた仕事の引き継ぎも兼ねて、一緒にやってもらったり助けてもらったりしていきました。これからはひとりで完結できることを増やしたい。トップレベルの大会とかに出るような選手を持って、サポートしていきたいですね。

でも私は、どちらかと言えばモノの方が好きなので、売り場の方が向いているかもしれません。この部署じゃなかったら、商品に囲まれたところで仕事したいですね。ウエアとか大好きで、お店で見てるだけで癒されます。

ずっとやっていけそう?

今年で25になるんですけど、27には結婚という計画を勝手に立てています(笑)。今の部署はやっぱり忙しいし土日とかも出なきゃいけないので、家庭を持つと大変です。やめるか、内勤の仕事オンリーにするか、どっちかですね。結婚後も会社に残れる雰囲気ではありますけれど。

この部署は営業と違って転勤はあまりないんですよ。選手との関係性が大事なので、その人しかできない仕事になっちゃうから。信頼関係とか一度作ったコネクションは、なかなか崩せないじゃないですか。

フリーエージェント制と言って、3年たったら行きたい部署を自己申告もできます。ポストが空いていなければ行けないので、なかなか希望通りにはならないんですが。

今、ニチジョに行ったりするとどう思いますか?

大学生っていいなと思いますね。正直、戻りたいです。

ニチジョ生、すごい個性ありますよね。体育大だからなんでもできるイメージありますけど、私、陸上ばっかりやってきたので、全然泳げないんですよ。水泳の授業が一年生の時にありましたけど、超苦労しました。友達にはずいぶん助けてもらいました。

競技をしに大学に来て、出ていく時にはほとんどの子が競技をやめて就職しますね。

陸上部の子は意識が切り替わっていると思いますよ。大学までって決めている子が多いんじゃないかな。その後もやるのは実業団レベルの選手じゃないとなかなか。

そうすると視界が360度広がるじゃない。その時は、どうやって仕事を選ぶ?

大学生活よりその後の人生のほうがずっと長いじゃないですか。わからないところにいくのは不安ですけど、自分の興味のあるところ、気になるところに行けばいいのかなと思うんです。

興味があっても仕事をやってみたら、つらいだけだったりすることもあるよ。

私だってそうですよ。外からみたら良く見えていても、実際にやっている方は苦しいんです。毎日、スニーカーで会社に通っているけど、そうじゃないと動けないんですよ。モノを運んだりするから、おしゃれもできないし...。

外からはそんな仕事ばっかりやっているって思わないでしょう。入ってみないとわからない嫌なこともいっぱいあります。怒られることもあるし、何かをやろうとしたら誰かに突っ込まれるし...。

やめたいと思う時もあるんですけど、でも自分が興味を持って入ってきたんだし、それが誰かのためになってる、誰かがやらなきゃいけない仕事だと思うと、やっぱりできちゃうんですよね。たとえば選手が宿泊するホテルの手配は誰かがやらなきゃ、ベストパフォーマンスは発揮できないわけで、そういう地味な仕事をやっている人がいっぱいいますよ。

うちの会社の場合は、どんなにいい大学を出ていたとしても、荷物運ぶのは変わらない。女だろうが男だろうが、仕事をする上では関係ない。やる仕事はみんな一緒です。そこはいいところかな。

うちの部署には課は違いますけど、ニチジョの大先輩がいます。ニチジョ時代は選手で、入社してからもしばらく選手をやっていて、引退してからは、会社に所属している選手のマネージメントを一手に引き受けてやっています。私もたまにお手伝いすることもありますが、選手が大会に出るたびに、登録とか、宿の手配とか、ウエアを送ったり、責任重大なんですよ。

そういう人を目指せば?

いやー、いいと思いますが、子どもも欲しいからな...(笑)。