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医療・福祉系
介護福祉士

関野 晶子(2009年度・健康スポーツ学専攻卒)

介護付有料老人ホーム


最後を見届けたい人がいる。

関野さんは、老人ホームでヘルパーとして働いています。日々のハードな仕事の中で、少しずつやりがいを見つけながら働いています。
<2011.02収録>

どんな仕事をしているの?

「介護付き有料老人ホーム」で働いています。「介護付き有料老人ホーム」というのは、介護を必要としている方向けの民間の有料老人ホームです。自治体や社会福祉法人などが運営している「特別擁護老人ホーム」に比べると入居費などは高いですが、その分きめ細かい介護サービスを売り物にしています。

どういう人が働いているんですか?

介護福祉士やホームヘルパー1級、2級の人、ケアマネージャー、看護師、掃除担当の人などがいます。

施設はどんな感じ?

入居者の要介護度の度合いによってフロアーが別れていて、1階は比較的症状が軽い「要支援」や「要介護」1や2の方、2階と3階は要介護度が高い方が入居しています。私がいる2階には32人の入居者がいます。

入居者は圧倒的に女性のほうが多いですね。2階は32人中、男性は8人です。部屋は個室で、各部屋にトイレと洗面台がついていて、部屋の外に食堂やお風呂などがあります。食事は基本的に皆さんで一緒に取ります。

入居費は比較的高くて、月30万くらいです。プラスイベントに参加する場合は別途かかります。入居待ちの方もたくさんいて、誰かがお亡くなりになって部屋が空いてもすぐに他の方が入ってきます。「特別養護老人ホーム」などはもっと低費用で入れるので、入居待ちはより多いようです。

仕事の内容を簡単に教えてください

介護スタッフは24時間、シフト制で働いています。早番、遅番、夜勤に分かれていて、早番は7時から15時半、遅番は12時半から21時、夜勤は17時から翌朝の10時までです。

朝6時から入居者の方が徐々に起き始めるので、着替えや洗面をお手伝いしたり、食堂までの移動を介助します。食事は基本的に自分で取っていただきますが、自分でうまく食べられない場合は補助します。食事の後は、リハビリやレクレーションなどをします。昼食後は入浴などをしていただきます。6時に夕食を取ります。要介護者の就寝は21時で、洗面所やベッドまでの移動、着替え等をお手伝いします。

掃除は担当の人がやっていますが、リネン交換は私たちがやります。介護が必要な方には、お風呂や排泄のお世話もやっています。あと「傾聴」と言って、入居者の方の話を聞くのも仕事です。だいたいの方は認知症になる前のことを良く覚えていて、色々なことを語ります。今はスタッフの数がぎりぎりなので、ケアに時間をとられて傾聴の時間が中々取れません。

2時間おきに部屋を巡回しています。21時までは遅番の2人がいるので、3人体制でやっているんですが、21時から翌朝の7時までは1人で、32人の入居者の方をケアしなくてはいけないので、気を抜けません。椅子に座るのは、介護記録を書く時ぐらいですね。

私は今、日勤を2日やって次の日は夜勤という感じでやっています。夜勤明けの日と次の日がお休みです。夜勤は2日分と見なされるので、4日働いて1日休みのシフトで働いています。

働き始めて最初はどうでした?

入社後に、1カ月ほど研修を受けて、5月から本格的に働き始めました。研修は講義だったので、実際の仕事は現場で覚えていきました。最初は入居者の話を傾聴するぐらいの事しかできず、まずはお名前を1人ひとり覚えることから始めました。

排泄のお世話やお風呂の介助など、最初は抵抗がありましたが、毎日やっていたら3カ月くらいで慣れました。おむつを交換している時に柔便が出てくる時などは、今でもちょっと腰が引けますが。

働き始めた頃は、精神的なストレスがすごくて、家に帰っても眠れなかったり、頭の中でナースコールの音がずっと鳴り響いていたりしました。

入居者の方とはどんな風にコミュニケーションを取っていますか?

99歳で1人で歩ける方もいれば、56歳で重い認知症の方もいます。症状が様々なので、人によって対応を変えています。自立ができている方には、普通に敬語でお話します。認知症の方でもたまに正常に戻る時もあるので、そういう時は普通にお話をしています。友達感覚で接しないと受け入れてもらえない方もいます。家族なのか友達なのかスタッフなのか、そのへんの区別が曖昧になってきている方もいます。

88歳の女性で、最近入ってきた30歳くらいのスタッフを、自分の旦那さんだと思い込んでいる方がいます。若い頃に旦那さんを亡くしていて、そのスタッフが旦那さんと似ているらしく、その方のつもりでは自分も30歳で、自分の部屋は2人の新居で、そこで新婚生活を送っているらしいんです。

そのスタッフがいる時はすごい楽しそうで、介護がやりやすいのでスタッフにも旦那さんの振りをしてもらっています。食事の介護もできる限りそのスタッフがやっていて、旦那さんにご飯を食べさせてもらうのだから幸せですよね(笑)。

逆にそのスタッフがいなくなると、「呼んで来て!」って泣き出したり、暴れたり、ナースコールを鳴らし続けたりして大変です。でもスタッフは他の仕事があるからずっと一緒にはいられないので、「旦那さんは、今お仕事に出かけています。」って言っています。

そのスタッフが来るまでは、おばあさんはずっと「死にたい。」って言っていたんです。ある時転倒して以来、車椅子生活になってしまって、食事も自力でできなくなって完全介護で、「生きていてもなんの役に立てないから死にたい。」って...

でも今では、そんなことを言わなくなったし明るくなりました。幸せそうだから、その人にとっては良かったのかなと思います。恋はほんとにどんな薬よりも効くんだなと思いました。

介護する時にいちばん大変なことは?

コミュニケーションがとれないのがいちばん大変ですね。認知症が進んでいる方は、言葉が理解できなかったり、理解してもすぐ忘れてしまうので...。

最近入居された80歳のおじいさんは、仕事をされていた時の地位が高かったようで、自分が一番偉いと思っているらしく、口調が常に「上から目線」なんです。だから他の入居者と度々ぶつかったりしています。

この間お通じでトイレを失敗して、部屋中が便だらけになってしまいました。私が慌てて便の付いた足の裏を拭こうとしたら、汚れていることがわからなくて、「くすぐったいのに何をする。」って怒られ、空手チョップで手が腫れるほど叩かれてしまいました。

耳が遠くて人の話が聞こえないので、無視されたと思っていきなり怒り出したり、他人の部屋に勝手に入り込んだり、不穏になって人に殴りかかったり唾をかけたり...。ここに入るまでもそういうことがずっと続いていたらしくて、奥さんはストレスで痩せてしまって、「もう施設に入れるしかない。」となってここに来たんです。

最初はトイレの場所がわからなくて、廊下で放尿してしまったりしていたんですが、そういう方でも、だんだん居室のトイレの中でするようになって、たまたま「今日は便器の中にできた!」となると、嬉しくなります。

夜勤ではどんなことが大変?

夜眠れない方の対応で、まずは傾聴をします。寝ないと体に悪いし、夜中に他の人のお部屋に入ってトラブルになったり、眠くて朝ご飯も食べられなくなったりするんです。眠れないのは、お腹が減っているとか、昼間寝ていたとか、探し物で眠れないとか色々理由があるようです。夜食を食べてもらったり、アロマを炊いたり、昔住んでいた家の雰囲気に合わせて布団や枕を変えたり、薬を飲ませたり、色んなことをやっています。

また夜勤の時は、事故がいちばん起こりやすいんです。私が夜勤の時、重い認知症の人がトイレに行こうとして、転んで骨折してしまった方がいました。普段記録を書いたりする場所から中庭を隔てて向こう側の部屋だったので音も聞こえず、いつ事故が起きたのかわかりませんでした。

朝5時半前後に巡回で倒れているのがわり、施設の車で病院に運びました。骨折だったのですぐ入院して手術をしたのですが、入院中も施設費はかかるので、それ以外に入院費もかかるとなるとご家族が大変で、「早く施設に戻してください。」と言われてしまいました...。

事故が起きたら、報告書を書かなくてはいけないんですが、6時には入居者を起こさなくてはいけないのでそのまま他の方の介護に追われて、細かい状況を覚えていなくて、報告書を書くのに苦労しました。

認知症の方と接していてどう感じますか?

自分も将来そうなっちゃうのかなってすごい考えます。

この前、待機者の方が見学に来た時に、何人かの入居者の方が奇声を発していて暴れる方もいて、動物園のような状態でした。それを見て待機者の方はショックを受けて違う施設に行ってしまいました。そういう状態は週に2、3回あって。

職場にいるとそれが日常だから、慣れちゃうんですよ。そういうことを変だと思わなくなっちゃう。友達に話すと驚かれて、初めて自分の感覚がおかしいと気づくこともあります。

いろんな状況に対処していかなくてはいけないんですね。

やることは決まっていても、常に状況が違います。主任は経験を積んでいるので、私たちが慌てちゃうような場面でも泰然としていて、事故が起こっても適切な対応を素早く行えます。

入居者の行動も、どうしてそういうことをするのかを考えていて、「行動には理由があるから、話を聞くことで解決することもあるし、薬で直せることもあるし、こちらが何かしないとだめなこともある。考えたことが当たっていたりすると、介護も面白くなるよ。」

「逆にわからない行動もある。何をやっても直らない人もいるので、それはもう昔からそういうことをしていたんじゃないか。」とも言っていました。たとえば施設の中で放尿をしてしまう人は、部屋を出たらもう外だと思っていて、しかも昔から立ちションを良くしていたとか...。

施施設長には「入居者のちょっとした変化にも気をつけて、それをスタッフ間で共有しあうのが大事だ。」と教えられました。

休みの日は何をしているの?

夜勤明けは10時ですが、いつも10時には帰れなくて、だいたい11時とか12時になって施設を出ます。ご飯を食べて、家に帰ったらバタンキューです。夜の9時頃に起き出して、洗濯とかをやってもう一度寝ます。夜勤で2日分働くから、2日分寝ないとだめだと思うんです。次に起きるのはお昼頃で、家事とかをしているとお休みが終わっちゃいます。

どうしてそういう仕事に就こうと思ったの?

もともと興味があって、小学生の文集に「将来はヘルパーになりたい。」って書いてありました。バスケをやっていて、先生やコーチにいつもお世話になっていたので、「自分が大人になったらお返しがしたい。」と。先生には「おまえの世話にはなりたくない。」って言われましたが(笑)。

スポーツが好きだったので、ニチジョに入りました。大学ではサークルでバスケや野球をやっていました。将来は社会福祉がやりたいと思って、3年生になって雨宮ゼミに入り、福祉施設で体操指導をやったり、障がいを持った子どもたちと一緒に遊んだり、障がい者の作業所に行ったりしていました。

その頃は現場を見てもそんなに大変だとは思いませんでした。むしろ、体操指導をやって喜んでもらえたり、動かなかったところがちょっとずつ動くようになったり、閉じこもっていた人が体操に参加して明るくなったりというのを見て、やりがいがある仕事だなと思っていました。

シュウカツは?

スポーツジムと社会福祉系を見比べていて、何カ所か施設見学に行きました。今のところは雰囲気が良かったのと、より質の高いサービスを提供するという思想に共感して決めました。大手の企業が出資していて、他と比べて給料が良かったというのもあります。就職が決まってから、卒業ぎりぎりにヘルパー2級の資格を取りました。

介護の仕事をやってみてどうですか?

介護って、3Kのイメージがあるじゃないですか。実際、楽しいことはほんの一部で大変なことの方が多いんですよ。私も、正直、最初は辞めたいって思いました。でも辞めても、次にやりたいことがなかったんです。

今、最期を見届けたい人がいます。80代後半のおじいさんなんですが、私が入った時には、まだ病院にいました。かなり危ない状態で、家族も延命しないと決めて、病院から戻ってきました。その時はもう骨と皮の状態で、体重は30キロを切っていました。施設に帰って来てからは完全介護で、スタッフが付きっきりでお世話をしました。

そうしたら、また食事が食べられるようになってきました。自分で食事ができるようになって、体重も33キロまで増えて、少しだけど意志疎通もできます。「もう一度自分の家に帰りたい。」って言うんです。「介護のせいだね。」って、病院の医師やスタッフが言っていて...。

そういう時に、自分が介護をしている意味が感じられます。良くなってきたのは決して自分だけの力ではないけれど、自分もそれに関われているという実感があって、その方は最後まで見届けたいんです。

成果が出るとほんとにやりがいを感じますね。でもほとんどの人は、認知症が進行していったり衰えていったりしますよね。そのことについては?

確かに衰えていくし、お亡くなりになっていきます。生きているのを家族に望まれていないという現実を見ることもあります。入居者自身もそういう状況をわかっていて、そういうのを見るのはつらいですね。そういう時は介護している意味があるのか、自分の仕事は何のためにやっているのか考えてしまいます。

主任は、「その人が生きていくためには介護が必要だから。」って言います。「生きることを望まれてなくても、本人はそれとは関係なく生きて行かなくちゃいけないし、その人の人生が終わるまでは誰かが介護しなくちゃいけない。」って。

でも毎日「死にたい。」って言われたりすると、自分たちがやっていることが、本人の希望に逆行しているんじゃないかと思うこともあります。

中途採用で、サラリーマンをやっていた40歳くらいの人が入って来たんですけど、半年くらいでギャップを感じて辞めていきました。何の成果もあがらず、「死にたい。」と言っているような人の世話をするのが、仕事と思えなかったらしいです。

営業とかの仕事をしてきた人は、発想の転換をしないといけないのかもしれないですね。介護は成果があるないに関わらず、やっていかなくてはいけないから、見返りを求めちゃいけないんだと思う。生きたいとか死にたいとか、楽しいとか苦しいとかに関わらず、命が続いていくかぎりやらなくちゃいけない仕事です。

介護サービスの中に、生き甲斐を与えることも入っていますか?

季節ごとのイベントや、入居者の方がお金を払えば体操教室とか習字や華道とかもできます。ケアプランを作る時に、ケアマネージャーが入居者の希望を聞くんですけど、うまくコミュニケーションが取れずに、家族の意見を参考に、イベントに参加してもらったりすることもあります。寝ているだけで何もしないで終わっちゃったりすると、本人はほんとにやりたかったのかなと思います。

完全介護は、生きるというよりも生かされている感があって、介護がなかったら死んじゃうしかありません。ほんとにただ生かされているみたいで、日常の中でちょっとした楽しみ、歌を歌ってあげるとか、そういうことをやってあげたいと思うんですけど、仕事が忙しくてそれも中々できません。

でも時々、なんかの拍子に笑ったり、ふと「幸せですねェ。」とか言う時もあって、そういうのを聞くと、なぜだか「介護していてまだ大丈夫なんだ。」と思ったりします。

生き甲斐があってもなくても、介護を続けていかなくちゃならない。

11月に92歳で亡くなった人がいるんですけど、その人はまだ未来に希望を持っていました。60歳から琴を始めたんですけど、指先が壊死する病気になって、指が使えなくて、弾けなくなっちゃったんですよ。それで手術をして帰って来て、本人は直ると信じていました。

小さくて細い人だったけど、もう一度琴を弾きたいと思って、食事もがんばって食べていて、最後は点滴で栄養を入れていて、それでももう一度琴を弾きたいって言っていて、亡くなられていきました。

そんな風に、やりたいことがあっても生きられなかった人を見ていると、なぜだか「死にたい。」って言っている人にも、少しでも長く生きられるような支援をしていきたいって思うようになりました。

生きていくのがほんとにつらそうな人、たとえば管だらけで動けないとか、ご飯が食べられないとか、体が常に痛いとか、死んだ方が楽なんじゃないかと思う人でも、自分の生を終えるまでは生き続けなくちゃいけない。だから介護が必要なんです。

それがいいとか悪いとか、やりがいがあるとかないとかじゃなくて、利益や見返りを一切度外視した仕事だと思います。

そういう仕事ができる人はすごいと思います。ずっと、続けていけそうですか?

案外この仕事が、自分の性にあっているかもしれません。5年働くと、ケアマネージャーの受験資格が取れるんです。同期何人かとあった時、それまではがんばろうねって話しています。

いずれは地元に帰って、ヘルパーの仕事をしていきたいと思っています。5年後に地元に施設を作る予定があるので、そこができたら転属したいと思います。それまでは、あのおじいちゃんを見守りたい。

バスケの先生のお世話をするのがほんとになるかもしれないね。

ほんとですね(笑)。でも、知り合いだと、その人に感情移入しちゃうから駄目らしいですよ。

最後に介護施設で働きたいニチジョ生にアドバイスを。

他の業界と一緒ですけど、いろんなところを見たほうがいいですね。同じ仕事でも、公的な施設と民間企業では、考えかたやサービス内容が全然違います。さらに会社によっても違います。介護も、デイサービスとか、短期滞在とか、長期滞在とか、色々だから、中身を良くみたほうがいいですよ。