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公務員系
児童館・児童指導

浅藤 理絵(2007年度・幼児発達学専攻卒)

区立児童館勤務


とくに用事がなくても会いに行ける大人っていいと思う。

浅藤さんは保育士を志望していて、公務員試験を受け区の福祉職として採用されました。ところが配属先は、思いもしていなかった児童館となりました。でも今では、この仕事につけて心から良かったと思っているようです。
<2009.05収録>

今の仕事について簡単に教えてください。

区の職員として、児童館で働いています。児童館というのは、18才以下の人(乳幼児の親も)を対象に、運動や遊び、工作など、さまざまなプログラムを自由に活用できる施設です。私はそこで、利用者の方のサポートをしたり、子どもたちと一緒に活動したりしています。働き始めて今年で3年目になります。

児童館って、どんなことをやっているのですか?

児童館は9時半から6時まで開館していますが、午前中の児童館は、おもに乳幼児を連れたお母さんが利用しにきます。私たち職員は、子どもたちと一緒に手遊びをしたり、ちょっとした体操をしたり、絵本の読み聞かせをしたりします。乳幼児を持つ親は、どうしても家のなかに閉じこもりがちなので、子育て広場みたいな感じで児童館を利用してもらうことで、お母さん同士の仲間の輪を広げるお手伝いもします。

午後は、主に小学生たちが児童館にやって来て、ドッジボールや卓球をしたり、マンガや本を読んだり、子ども同士の待ち合わせ場所に使ったりしています。職員も、子どもたちと一緒にドッジボールや卓球をしたり、工作をしたり、時にはクッキングをしたり、子どもたちの遊びをサポートします。学校がお休みの日は、ハイキングに行ったりもします。

ちょっと学童保育に似ていますが、児童館は子どもを預かるというよりも、子どもが来たい時に来て帰りたい時に帰るという感じで、もっと自由なんです。

職員はどんな風に子どもたちと遊んでいるの?

ドッチボールとかは、仕事だと思ってやっていないかな。ほんとにやりたいからやっている(笑)。私は、子どもたちに声をかけてもらうと、「やる、やる!」って喜んでやっています。自分から「やろうかな。」って言って誘ってみたり。

私たち、ほんとに真剣に遊んでいますよ。思い切り完全に遊ぶ。そうしないと、子どもは敏感で「手加減してるでしょ。」って言ってくるし。あんまり本気になりすぎて、子どもに「大人げない。」と言われることもありますが(笑)。

工作室では、子どもたちが作りたいものを作ります。子ども自身の手で作りますが、そこに職員も入って、一緒にあれこれ考えながらやっていきます。子どもたちの遊びのなかに、職員が入ってちょっと刺激を与えるという感じかな。

もちろん仕事は遊ぶだけじゃないですよ。事務室のなかにこもって、事務作業をする時もあります。また児童館で地域のイベントやお祭りに参加したり、キャンプに行ったりもします。

もともとそういう仕事をしようと思っていたのですか?

いいえ。大学に入る頃は、幼稚園か、保育園の先生になろうと思っていました。子どもも好きだけど、体を動かすことも大好きだから、保育と体育をくっつけたらおもしろいかなと思い、ニチジョに入りました。短大じゃなく4大にこだわったのもあります。保育士だけど、他の人とはちょっと違う何か、プラスアルファが欲しかった。

当時は、幼稚園と保育園のどっちに進むかは、まだ考えていませんでした。4年間で考えればいいかと思って。私自身は私立の幼稚園に行っていました。1年の夏休みに実家に帰った時、「保育園ってどんなだろう?」と思って、近くの保育園を見学させてもらいました。2、3日通って保育の流れなどを見せていただきました。

その園で、学童保育のアルバイトを紹介していただいたんです。公立の保育園だったので学童保育とは役所の管轄でつながっています。学童保育では、1カ月くらいアルバイトをしました。

2年の保育実習は、実家の近くの公立保育園で実習を受けました。学童保育のアルバイトでお世話になった先生が、その園の園長になっていてびっくりしました。

実習をやってみてどうでした?

正直に言うと、何がなんだかわからなかった。赤ちゃんの抱き方からして、「どう持てばいいの?」みたいな感じで、いまいちしっくりこないというか...。大学の実習室で、赤ちゃんのダミー人形を抱いたりしていたんですけど、やっぱり生身だと全然違うんですね。動かないのはどう抱いても大丈夫だけど、動いているとちょっと難しくって。

でも1日中保育園にいて、お昼寝やお散歩、おやつがあったりするのは、新鮮な感じでした。実習で、何を学んだっていうよりも、園の雰囲気が家庭的であったかく、時間の流れ方がゆったりしていて、なんか保育園っていいなって思いました。

幼稚園実習は?

4年の春に、やはり実家の近くの私立の園に行きました。幼稚園は保育園と違って、しっかりカリキュラムがあって、教育的な側面を感じました。幼稚園は基本的に午前中だけだから、子どものいる時間が短い分、中身は濃いというか。

この時間は絵を描く時間、この時間はお歌の時間っていうのが、きちんと決まっていて、その時間内で集中してやる。それがおもしろいというか、見えてくる部分もあって、やってみたいとも思いました。でも一方では、こなすだけで精一杯ということもありました。

保育園は、長い子は12時間近くいるので、集中より発散という感じで、何もない時間がけっこう大事というか、我慢している時間がないんですよ。漠然とでしたが、将来的にどっちって言ったら、私には保育園の方が合っているかなと思いました。

実習で大変だったことは?

日誌かな。あれは、今思ってもぞっとしますね。何をやったか全部書くんです。「途中でメモれ。」とか言われるんですけど、実習の最中はメモってる場合じゃないし、とりあえず暗記して、家に帰ってから必死になって思い出して書いて、清書して...。毎日夜中までかかりました。

すごく小さい字で書くんですけど、それでもページに納まりきらないので、ページを継ぎ足していって、終わる頃にはモコモコに分厚くなって。みんな、そうでしたよ。実習中は、それぞれ1人でがんばっているので、夜友達に電話をして、「どう?やっていける?」とか、励ましあいながらやっていました。

将来を具体的に考え出したのは?

実習をやってみて、やっぱり公立の保育園で働きたいっていう気持ちが、すごく強くなって、公務員試験を目指すことにしました。地元で2カ所、東京で1カ所受けました。地元はすごい倍率で、50倍、30倍とかでした。

地元の試験はとってもむずかしく、問題の意味すら理解できないところもあった。あんなに勉強したのに、ここまでわからないのっていうくらいむずかしく...。間違って受かってくれればと思ったんですが、2つともやっぱりだめでした。

東京の区役所を受けたのは、地元の試験の練習のつもりでした。地元の試験は9月の頭で、東京は8月の末だったから。私の受けた区は50人という大枠の採用で、受験者が集中するだろうなって思ったんですけど、練習だと思って受けました。

区の試験はどうでした?

850人くらい受けていたから、「人が多くてすごかったー。」で終わりました。「誰が受かるんだろう?記念受験だったな。」とも思いました。その頃私は、地元で児童センターのアルバイトをしていて、休みを1日だけもらって東京に行き、試験を受けてきました。

区のほうは、試験自体はあまりむずかしくなかった。自分のなかでは、普通に解けて。「ってことは、みんな解けてるんだな。」って思ったけれど。『もしあなたが保育士になったら、何がしたいですか』というテーマで小論文があって、つらつら書いて、すごく書けたわけではないけれど、思いは一応伝えられたかなと思いました。

当時の本命は、やはり地元の保育園でした。1人っ子ということもあって、実家に帰って就職するのが妥当かなという思いもあり。でも結果的には、本命が落ちて、記念受験のほうが受かっちゃった。合格通知がきたのは10月だったと思います。

親ですか?帰ってこいって今でも言いますよ。でも公務員というか、公立の福祉職にこだわっていた自分を親は知っているから、どこかで喜んでいる部分もあるんです。場所はどこであれ、なりたかったものになれたということで。

シュウカツもしたの?

しました。大学で4年間どっぷり保育園や幼稚園のことばっかりやっているから、なにか視界が狭いような気がして...。それしか知らないまま社会に出る怖さもあり、公務員志望だったけど、シュウカツもやって、少しでも自分の世界を広げておきたいと思いました。キャリアセンターにもよく顔を出して、相談していました。

地元の企業が、東京で説明会を開いてくれたりしたので、行ってみました。話を聞くなら、知っている地元の企業のほうが、とっかかりやすいというか、興味もあるし。説明会で社長さんや人事の方の話を聞いたり、企業に入るためのマナーを学んだりしました。

実際に受験もしました。5社くらいかな。ある流通業界の会社は、最終までいきましたが最終は辞退しました。企業の人には申し訳ないですが、なんとなく違うというか、「もし受かっても、辞めるかも。」と思ったから。でもほんとは、そこで受かっちゃったら、企業に逃げるのが自分でも怖かった。

企業に逃げるって?

もし公務員試験を全部落ちたら、そのあと自分は、私立の保育園や幼稚園を受けたと思うんですが、そのときに「やっぱり違う...。」と思って、企業に逃げるんじゃないかという思いがありました。なんでだろう?将来的に考えると、子どもの数も少なくなるし、保育園や幼稚園が安定かと言われるとそうでもないと思う部分もあり、やっぱり大きい会社に属していたほうが、安全かなって思っちゃったり...。

保育士になろうと思っていたのに、児童館勤務になったことについてはどう思う?

4月1日にあった、辞令交付式で初めて児童館への配属がわかって驚きました。式で指定されて座った席が、後ろは全員女の子だったのに、私の両はじは男の子だったので、「これはなにかあるな。」って思ったんですけど。

先生からも「1年目はだいたい保育園だから。」っていう話も聞いていて、採用が決まったあとは、区の保育園でアルバイトをしていました。頭からもう保育園に行くものと自分では思っていましたから、戸惑いましたが、失望はしませんでした。

それはたぶん、児童センターでアルバイトしていたからだと思います。1年生の時に、地元の学童でアルバイトして、そのつながりで、4年生の時に児童センターでアルバイトしたんです。で今度は児童館ときたので、全部つながっているというか、なにか運命のようなものを感じました。

仕事を実際にやってみてどうでした?

地元でバイトしていた児童センターは、常勤が2人だけであとは非常勤でした。児童館は、常勤の職員が6~7人いるので、サポートの中身がやはり濃いと思いました。しかもずっと児童館でやってきているので専門性を持っています。

最初は児童館に来るお母さんたちと、コミュニーションの取り方がわかりませんでした。私自身の問題として、「私には子育ての経験がない。」っていうことにどうしても意識がいってしまい、どう声をかけていいのか悩みました。

保育園であれば、子どもを通してそれぞれに共有できる時間があるし、何時に寝て何時に起きた、熱があるとかないとか、お母さんと保育園の先生が行う、朝の確認事項もあるじゃないですか。でも児童館の場合は、お母さんがポッと来て、ポッと帰るだけなので、そういう話もできません。

どういう風に解決していったの?

2年目くらいから、顔見知りのお母さんがちょっとずつ増えてきて、やっと話ができるようになってきました。子どもを見て「今日はいい表情してるね。」とか「前より大きくなってる。」とか言うだけでも、お母さんたちはいつも見てくれているんだなって思ってくれます。だから何でもいいから話題を見つけて話すようにしています。

たまにしか来ないお母さんでも、できるだけ名前を覚えて「何々さん。」って名前で呼ぶようにしたり。すると、名前を覚えていてくれたということで、話ができたりするんです。そのへんはだいぶ慣れてきたというか、ちょっとずつ染まってきたかな。 

大人同士の会話は、慣れもありますね。でも言葉に気をつけていかないと、突然来なくなっちゃったりもするので、そこはシリアスですよ。なんとなく話しづらいなあっていう人には、ママ友を紹介してあげるんです。お母さんたちの輪の中にうまく入れるようにちょっとだけ後押してあげる。同じ年齢の子供を持つお母さん同士なら話せることがきっとあると思うので。

お母さん同士で話し始めて、最後に携帯のアドレスを交換したりしているのを見ていると、子育てって必死な部分もあるんだなって感じます。

仕事のやりがいって何ですか?

イベントやお祭りに参加して、子どもたちと手を組んで、地域の人たちと一体になってなにかをやり遂げたりすると、「ああ、やったな。」っていう感じがします。

あと些細な事ですが、子どもたちから名前で呼んでもらうと「仕事しているな。」って感じます。小学校高学年くらいの男の子は、恥ずかしいからなかなか名前で呼ばないで、職員にも「すいません。」とか「ねえ。」だったりするんですが、とっさの時に「理絵」とか「理絵ちゃん」って呼んでくれたりすると、その子の中に「私」というものが存在しているのかなって思い。始めは慣れなかったんですけどね。

遊んでいる時に、一瞬でも「楽しかったな。」って思ってくれればいいと思います。別にそれを意図してやっているわけではないし、むしろそんなことは意識しない方がいいんですけどね。子どもたちが帰る時に、「またね。」とか「また明日。」とか言ってくれると、「また来てくれるんだ。今日1日はなんか良かったのかな。」って思います。

いろんなところで、その日その日の子どもたちの成長を見られるのもおもしろいですね。特に小さい子どもの成長は早いから、「あれ、もう歩けるようになってる。」とか「しゃべるようになった。」とか、お母さんと一緒に喜びあったり、そんなことを共有できるのはやっぱり児童館だからかな。一緒に何十人も育てている感覚ですね。

保育士にはなれなかったけれど、結果的にはほんとに良かったと思っています。仕事を始めて、職員にも恵まれて、そう思わせてくれました。仕事を通して、子どもからもいろんなことを教えてもらい、経験させてもらったから。

仕事の目標みたいなものはありますか?

児童館の職員として、自分自身の専門性を高めていきたいです。私たちは、子どもにこうしてもらいたいっていう目標はないんです。ドッチボールも、別にうまくなるためにやるんじゃなく、子どもがやりたいからやる。仕事上でノルマや目標を達成するっていうこともないし、その点は民間の企業とは、たぶん感覚が違うんでしょうね。企業に勤めている友達に、「児童館で、ああだった。こうだった。」っていうお話をしても、「ふーん...」。それでおしまい(笑)。

仕事でつらいことはありますか?

土日休みじゃないことかな。休館日は月曜日です。土曜日は必ず開けていて、日曜日は隔週で休館です。だから日・月か、月・火がお休みになります。世間とお休みが違うというのはいいところもあるけれど、ちょっと悔しい部分もありますね。

お休みの日は何してる?

今は年度が替わってすごく忙しいので、休みがあれば寝だめ。あとは、部屋をかたづけたり、洗濯したり、雑誌読んだり、音楽聴いたり。たまに外に出て、友達と遊んだり。

仕事の時は、いつでも遊べるようにジャージだから、お休みの時くらいはジャージを着ないで、ちゃんとした格好をするようにしています。せっかくのお休みなのに、仕事の時とおなじ格好で町を歩いていて、子どもたちに「理絵ちゃん!」なんて声をかけられたら嫌じゃないですか(笑)。

お休みの日にふらっとキャリアセンターに行ったりもするんですよ。何をしにでもないんですけど、スタッフの人とお話しして、それでなんとなく元気をもらって帰ってくる...。別に用事はないけれど、会いにいける大人がいるって、やっぱりいいなと思います。

夢は?

近未来では、自分が子どもを生んで育てていく時に、児童館を利用したいですね。利用者になって初めてわかることもあると思うし、自分の視野を広げていきたい。結婚の予定は全然ないんですけど(笑)。

結婚しても、専業主婦にはならないですね。今の仕事をずっとやっていきたい。もちろん自分の子どももかわいいと思うんですけど、児童館に来ているみんなも含めて自分のなかの家族のような感覚でいきたい。

児童館ってなんのためにあると思いますか?

なんだろう?大学の近くにあるもぐら公園でも、子どもが泥んこになって遊んでいたり、子どもの自主性に任せて火を使ったりしていますよね。児童館の先輩は、そういうところを作ってきた人たちでもあるんです。

今の子どもって、学校では先生に押さえられたり、家でもあれをやっちゃだめとか制約があるじゃないですか。その点、児童館って変なことしなければ、だめっていうのがないので、子どもたちがのびのびできると思います。

児童館に来て遊ぶことで、たとえ学校や家庭で色々あっても、その子の悩みが少しでも和らいで、気持ちが安定してくれればいいなと思います。私も子どもたちに、恋の悩みとか相談されたりするんですよ。

児童館に来ていた子が、高校生や大学生や大人になって、職員が異動しても、わざわざ自転車や電車に乗って、異動先の児童館に会いに来てくれたりするんです。受験で受かったとか、就職が決まったとか、結婚することになったとか、節目節目で来てくれる人を何人も見てきました。

そういう繋がりって、なんかおもしろいというか、すごいと思いませんか?親や学校以外で、その子が歩んでいる道にそこまで寄り添っている大人って、いないんじゃないかな。私はまだ2年ちょっとしか働いていないから、そこまではないですけど、いつかそういう風になれればいいなと思っています。

ニチジョ生で良かったところは?

当時は授業をこなすことで精一杯だったけれど、やっぱり勉強プラスアルファで、「体育」があったことかな。体育って「体を育む」だけど、そういうことをニチジョで学ぶことができたと思います。今、子どもと関わっていくなかで、「体動かすと楽しいんだよ。」っていうことを、遊びを通して伝えていければと思っています。

ニチジョ生にメッセージをお願いします。

私は、最初から児童館の職員になりたいという目標を持ってきたわけではなくて、言わばめぐりめぐってその仕事に出会ったのですが、私のやってきたことがひとつでも欠けていたら、児童館にはたどりつかなかったのかなって、今は思います。あの時の保育園の見学があって、学童や児童センターのバイトがあって、今の自分があるというか。

皆さんも、いろんなことに顔を出して、参加してみるといいと思います。例えばプレーパークなら近くにあるし、行ってみると今時の子どもっていうのがわかりますよ。小学生だけじゃなくて、幼児連れの親もくるから、それも勉強になる。児童館は行こうと思わないと行けないですが、興味があればぜひ顔を出して見てください。「見せてください。」って言えば、喜んで見せてくれると思いますよ。

あと、ボップってご存じですか?Base Of PlayingでBOP。遊びの基地のことです。学校が終わった子どもたちが、放課後学校の校庭とかで遊んだりしています。S区でもやっているから、そのバイトをやっているニチジョ生もいるんじゃないかな。

大学生が、子どもと遊ぶってなかなかないじゃないですか。そういうところで、子どもと思い切り遊んでみるっていうのもいいですよ。

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