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ダンサー

佐伯 理沙(2005年度・舞踊学専攻卒)

ダンサー


仕事は、人から人につながっていく。

新国立劇場などで、ダンサーとして踊っている佐伯さん。卒業して4年、ずっとダンスを中心とした生活を続けてきました。「踊る仕事」について、お聞きしました。
<2010.05収録>

何をやっているの?

2008年に、新国立劇場の「トゥーラン・ドット」というオペラで、ダンサーとして踊りました。その後も時々、新国立劇場で踊らせていただけるようになりました。今年も、5月から始まるオペラ、『陰のない女』という演目で踊ります。その他は、スタジオでダンスを教えたり、ヘア・ショーで踊ったり、着物のモデルをやったり、お声が掛かればなんでもやっています。

仕事はどこから?

カザミアスタジオというダンススタジオに所属して、そこからいろんなオーディションのお話をいただいたり、スタジオ関連のタレント事務所のお仕事をいただいたり、ヘアメイクの方からショーの仕事をいただいたりしています。

ダンスだけで食べていける?

新国立劇場のようなお仕事が年間を通じてあれば食べていけますが、私はまだそこまではいけなくて、スタジオでダンスを教えたり、他の先生の代講を勤めたりしながら踊っています。6月からはキッズも教えることになっています。

その他にも自宅近くの宅配便の営業所で、午前中だけのアルバイトをやっています。朝6時から9時くらい、遅くても11時までなので、その後レッスンを受けに行けるし、ニチジョの後輩もいて、「今日は卒業式でした。」とか「入学式です。」とか教えてくれるので、まだニチジョにいるような気がします(笑)。

ダンスはいつから?

高校からです。九州の高校で、創作ダンス部に入っていました。その頃は、「ダンス」イコール「創作ダンス」って思っていました。ニチジョに来て初めて、バレエとかジャズとか、ダンスの種類がたくさんあるんだって知りました(笑)。授業では苦労しましたが、いろいろなジャンルのダンスを学べて良かった。大学ではモダンダンス部に入りました。

大学の頃、将来どうしようと思っていました?

2年生の時、テーマパークで12月28日から大晦日まで踊るアルバイトがあったんです。喜んで応募して、友達とパレードで踊りました。でも実際にやってみるとすっごく寒くて、ホカロンを背中に3枚くらい張って踊りました。傍で見ているとあんなに楽しそうなのに、実際に踊るのは大変だとわかり、テーマパークのダンサーの厳しさを思い知りました。

3年生の時、ダンサーのSAMさんがニチジョに来て、ワークショップを開きました。その頃私は、バックダンサーにあこがれていて、ヒップホップとかストリート系のダンスをできるようになりたいと思っていました。その後SAMさんが自分のスタジオを開いたことを聞いて、レッスンを受けに行ってみました。

苦手なストリート系を克服しようと思ったのですが、SAMさんは平気な顔してヒョイヒョイ踊っているのに、私には足がどっちに出ているのか全然わからなくてなかなか克服できませんでした。私はいつも胸をはって踊っていたので、体はダウンさせて顔だけ上がってみたいな姿勢にすごい違和感があって、私がやってもどこか不格好に見えてしまうんです。

SAMさんのスタジオに、安室奈美恵さんやBoAさんのバックダンサーとして踊っている先生がいました。ある時その先生に、「あなたは、バックダンサーとしてはやっていけないわよ。」って言われました。

どうして?

私は大柄なほうなので、タレントよりも背が高いと、バックダンサーには向かないらしいんです。その先生に「舞台方面でいったほうがいいと思う。」とアドバイスをいただきました。その先生は今でも時々、「大丈夫?生きてる?」って連絡をくださる、恩師のような存在です。

4年の時、その先生が振り付けをした発表会で踊らせていただきました。その時、今のスタジオのオーナーに「うちで踊ってみない?」ってお声を掛けていただいたんです。

卒業して変わったことは?

大学の頃は興味本位で「なんでもやってみたい。」と思っていましたが、卒業してみると、それでは厳しいというのがわかり、もう少し活動の的を絞っていこうと思いました。

高校からダンスを始めたので、ダンス歴が短かいことにコンプレックスがありました。スタジオのオーナーはバレエの先生で、「まずバレエを完璧にしなさい。」って言われ、毎日バレエで体を作ることを徹底してやっていきました。今でも何かない限り、毎日スタジオに行き、週に12~13レッスンは練習しています。

バレエは自己流でやるとすぐわかってしまい、先生にダメ出しされます。同じアラベスク(クラシックバレエの基本ポーズの一つ)でも、他の人と痛くなるところが違うので、体の使い方がそもそも違うのかな。もっと小さい頃からバレエをやっておけば良かったなとつくづく思います。

スタジオに通い出して2年くらいたった2008年の夏に、スタジオのオーナーの紹介で、ニューヨークの『アルビン・エイリー』というダンスカンパニーに1カ月間行ってきました。黒人を中心としたダンスカンパニーで、色んなレッスンを受けたり、リハーサルを見せてもらったりしました。他にも『Steps on Broadway』とか、いろんなダンススタジオを見学して、すごく刺激を受けました。

向こうでは、ダンスに対する思い入れの違いを感じました。見た目ももちろん美しいんですが、それだけじゃなく、踊ることを心から楽しんでいる感じがしました。フィジカル的にも筋肉のお祭りみたいで(笑)、まともに戦えそうにない気が・・・。一緒にレッスンをしていても、ジャンプの高さが圧倒的に違うし、回るのも5、6回連続は普通、8回くらい回っている人もいて、そこはちょっと悔しかった。

新国立劇場で踊ることになったきっかけは?

ニューヨークから戻ってしばらくして、新国立劇場で踊るダンサーのオーディションのお話をいただきました。『トゥーラン・ドット』というオペラで、私にとっては初めてのオーディションでした。会場に行くともうすでに何百人もいて、「うわっー、こんなに人が来るんだ。これはもう無理だ。」と思い、途中で帰りたくなりました。

オーディションのために、海外から演出家の方が来日されていました。200人以上は居た気がしますが、全員番号札をつけて会場に並ぶと音楽が鳴り始め、9人くらいずつ交代しながら前に出ていき、音楽に合わせて踊りました。それが繰り返され、少しずつ人が減っていき、気がついてみると何十人かになっていました。

その後2次審査が行われ、あなたは鳥のようにとか、猿のようにとか言われて、音楽に合わせて即興で踊りました。どんな風に踊ったか全く覚えていませんが、その時も少しずつ人が減っていて、「ああ、私まだ踊っている。」って思いながら踊っていました。

音楽が止んで「はい、いいですよ。」って言われ、番号が呼ばれていきました。どきどきしながら立っていると私の番号が呼ばれ、不思議な感じがしました。「最終結果は後日お知らせします。」って言われ、オーディションが終わりました。帰りがけに演出助手の方に呼び止められ「あなたは大丈夫ですよ。」って言ってもらえて、その時は本当に嬉しかったです。

オーディションで選ばれたのは、結局8人でした。どうやったら通るのか何も考えずに行き、何をやるのかも全くわからず、自信は全くありませんでしたが、踊っている時、不思議とスタジオの先生の「大丈夫だよ。」っていう声が聞こえたような気がして気が楽になり安心して踊れました。

スタジオでバレエをやってきたことや、いろんなジャンルのレッスンを受けたこと、大学の時に即興の練習をしていたこと、色々やっておいて良かったと思いました。

出演してみてどうでした?

本番は2週間でしたが、振り付けやリハーサルで1カ月半くらい通いました。海外から来た振り付けの方に振りをつけていただきました。『トゥーラン・ドット』は、昔の中国のわがままな王女の話で、私たちは踊りで人を魅惑するシーンや、悲しみを表現したりするシーンなどで踊りました。写真があるんですけど、この反っている姿勢をずっとキープしなくちゃいけなくて足がプルプル震えてしまいました。

本番は2週間、本番の後2日空いてまた本番という感じでした。歌う方の喉の調整のために2日空けるらしいです。国立劇場は、設備が良くスタッフの方も充実していて、例えば舞台に出るきっかけを袖で教えてくれる「きっかけ出し」の人が、ひとりひとりのダンサーについてくれるなど、至れり尽くせりでした。

オーディションで選ばれた人たちとは1カ月半ずっと一緒だったので、仲良くなっていろいろ話しました。同年代だったので、恋ばなやネイルの話で盛り上がっていました。ギャラは最初に提示され、あの時は4、5シーンに出たので、金額も良かったです。

卒業して4年、踊る仕事をやってみてどうですか?

もっと華やかでオープンな世界だと思っていましたが、この業界に飛び込んでみると、人のつてや紹介が重要だったり意外に門が狭いことを感じます。いろんな人と接触していないと、お話もなかなかこないし、待っていても絶対チャンスは来ないことがわかりました。学生の時は、先生やまわりの友達が「やってみない?」とか言ってくれたので、頑張っていればお話は向こうからくるのかなと思っていたんですけど、決してそんなことはありません。

『トゥーランドット』で、演出助手の方に仲良くさせていただいて、「次に何かあったら呼ぶね。」って言っていただきました。そうしたらほんとうに後でお話をいただいて、お仕事って、人から人につながっていくんだなって実感しました。1人でがんばっていても、絶対次にはつながらないし、やっぱり周りの人のおかげですね。

でも、常に「自分はここにいますよ!」って発信していないと、なかなか振り向いてもらえませんので、最近はコンクールにも出るようにしています。去年の5月、ジャズダンスコンクールにソロで出て、特別賞をいただきました。

初めてソロで踊ってみて舞台の広さを感じ、勉強になりました。たった1人でこの空間を埋めなきゃいけないというプレッシャーで、芸人の気分で何か面白いことをやらなきゃって思ったりしました。今年は、お仕事の日程と重なってしまったんですけど、またいつか挑戦してグランプリを狙いたいと思います。

これからどんな感じでやっていきたい?

自分がまだ見えてないっていうのもあるんですけど、やりたいことがたくさんあって、これというこだわりは今のところありません。エンターテイメントが好きなので、ミュージカルとかもやってみたいと思います。

最近、演技の勉強も始めました。演技はダンサーには関係ないと思っていたんですけど、演じることも大事だとわかりました。元々自分の殻を破れないところがあって、演技の勉強をしてからすごく自分が開けた感じがします。

自分を捨てるというか、豚になれと言われたら豚にならなきゃいけない。でもそれを演ずることで、あの豚は何者だ?みたいなことになればいいなと思っているんですけど。演出家の意図にもちゃんと沿わなければいけないけれど、そういう方の世界に入っていくのも好きです。

自分の作品も作っていきたいと思います。モダンダンス部でやってきた仲間達と、また集まって一緒にカンパニーとかを作れればいいですね。ヘアショーのお仕事も好きで、やっていきたいと思います。つい最近も、髪の毛をがたがたに切られて、ダンスをしながらファッションショーのように行ったり来たりしました。そんな感じでいろんなところに手を出し、足を出しています。

自分をプロのダンサーって、自信を持って呼べるには?

たとえば人でいうと、シルビィ・ギエムさんは、神懸かり的なプロだと思うんです。やっぱり、ファンがいて、批評があったり(悪い批評も含めて)、注目されていることが成功しているというか、一線でやっているダンサーという感じがします。大衆の目に知られてないうちはまだまだかなと、私は考えちゃいます。

だから、自分もまだまだプロとは言えず、修行の身です。仕事で踊るのと自主的に踊るのとは違うと思いますが、ダンサーはそこが曖昧になりがちです。仕事じゃなくて舞台に出ると、チケットノルマがあったり、参加費や衣装代で持ち出しになってしまうんですが。

ダンスでご飯が食べられているかっていうのもある?

それもあると思います。私の場合は、月によります。新国立劇場のようなお仕事が続けて入れば、安泰なんですけど、何もない時は、アルバイトしたり、教えたりしていますから。ほんとはこれをやれば安泰というのはなくて、体がだめになったらおしまいになるし、不安定なところにいるんですけど、私はそういう道を渡っていくのが好きというか、体がそこに行きたいと言っているというか、抜け出せないんです。

私は自分を会社って思っていて、どうやって宣伝していこうとか色々考えるんですが、どの作品に出たらどうなるとか全然わからないので、手当たり次第という感じです。自分を磨いて、いろんなジャンルに挑戦しながら、自分を売りだしていきたい。

バックダンサーの仕事について教えて?

まわりに何人かやっている方がいらっしゃって、ケツメイシのバックで踊っていたり、ツアーとかにも行ったりしています。

バックダンサーは、その時限りのプロモーションビデオだったり、単独の歌番組で踊るくらいだとあまり稼げないのですが、アーティストさんに気に入られて専属になり、ツアーに一緒に行ったりするようになると、いい仕事らしいです。

宅配便の仕事をしているときの自分と、踊ってるときの自分は、どっちが本当の自分ですか?

私は人と接するのが苦手だったので、黙々と荷物を仕分けしたりパソコンのキーボードを打ったり、こつこつスタンプ押したりするのも楽しいし、裏方というかこういう仕事も自分に合っていると思います。根暗だけど一方で目立ちたいみたいな、2面性があるんですね。

ダンスをすることに対して親の反応は?

自分の力でやりたいことをとことんやりなさいっていう感じです。でもやっぱり気にかけてくれていて、時々仕送りや物資が届きます(笑)。なにも言わないんですけど、応援はしてくれているみたいです。

ニチジョ生に、ダンス業界で生きていくためのアドバイスを。

やっぱりいろんなジャンルができたほうがいいと思います。ただいろんなことをやりすぎて、「いちばんできるのは何?」って聞かれた時に答えられないのもどうかなと思いますが。でもお仕事では、いろんな体になれたほうが強いと思う。私も今のスタジオで、いろんな先生のレッスンを受けています。

自分の技術が向上したらそれに見合うものがくるっていうことを、実感したことがありました。それがトゥーランドットのオーディションです。やっぱり技術的なことはプロとして必ず要求されるので、そこは追求しておいたほうがいいと思います。あと、表現とかそういう部分が未熟でも、自分を殺さないで出していくことが大切だと思います。

最後に、自分の肩書きはなんだと思う?

私、道化師が大好きなんですけど(笑)、ダンサーでいきたいと思います。