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保育士という仕事を通して学んだこと

伊藤 美佳さん

輝きベビースクールアカデミー代表理事


本日のお客さまは、「輝きベビースクールアカデミー」代表理事の伊藤美佳さんです。伊藤さんは保育士・幼稚園教諭として26年間、5000人超の子ども達の保育に関わってきました。また幼稚園の代表職として、経営難の園を系列12園の再下位から1位の人気園に立て直した経験もお持ちです。現在は、乳幼児教育の専門家として、講演や保育教育のコンサルティング、ベビースクールの講師養成講座等を主宰しておられます。
<2016.11収録>

保育士から結婚。専業主婦に

皆さん、こんにちは。私は26年間、保育士や幼稚園教諭としてやってきて、2年前に幼稚園を退職して、今は自分の会社で、0歳から3歳の乳幼児の親子教室というのをやっています。先日、その教室にニチジョOGの方がいらっしゃいまして、今日はそんなご縁でこの場にやってまいりました。

最初に私がなぜ保育の道を選んだのかお話しますと、まず自分は体育や音楽、美術が大好きだったんですね。要は勉強よりも、楽しく動いたり音楽をしたり、そういうのが好きだったので、保育の道を選びました。保育の学校で専門的なことはもちろん、手遊びしたり色々なものを作ったり、現場ですぐ実践できるようなことも学んで、卒業してすぐに保育園に就職しました。それから5年間、保育の仕事をしていました。

そして結婚して、8年ぐらい専業主婦をやりました。その間に3人子どもが生まれて、戦争のような子育てをしながら、「いつかもう一度、保育の仕事をしたいな」と思っていました。子どもが生まれてからのほうが保育の仕事が面白くなって、教育に対する考え方も180度変わりました。それは長男が幼稚園に行き始めのたがきっかけでした。

長男の幼稚園は、鼓笛があって鉄棒があってピアニカも習って、いろんなことが普通にできる園でした。でもそのやり方はちょっと強制的で、「子どもはなんだかつまらなそうだな」と感じていました。ある時、長男の友達が「幼稚園に行きたくない」と言い出したんです。そこでその友達のお母さんが転園を考えて、いろんな幼稚園に見学にいきました。

そうしたら幼稚園によってやり方も雰囲気も全然違うんですね。その中でひとつ、すごく楽しそうな幼稚園を見つけました。そこで私も思い切って、長男をその園に転園させることにしました。子どもは「なんで?」と思ったろうし、入園金も払い直さなければならないし、3家族一斉に転園したので元の園の評判も落ちてしまうし、それはそれで大変だったんですけどね。

でも結果的に、転園先の幼稚園が長男にはすごく合っていて、毎日楽しそうに通っていました。その園のモットーは、「好きなことを好きなだけやる」ということでした。その園に子どもを入れて私が感じたのは、「やりたいことをやりたいだけやれるって、すごく楽しいことなんだな」ということです。

モンテッソーリとの出会い。幼稚園に復職

その園の教育法は「モンテッソーリ教育」って言うイタリア発祥の教育法でした。私はそれに興味を持ったので、日本でその教育法を教えている学校が京都にあると知って「是非学んでみたい」と思いました。それで子ども3人をダンナに預けて、京都まで通って学び実習も受けました。

長男が通った幼稚園を一番下の子が卒園する時、園長先生から「うちに来ませんか?」ってお誘いいただきました。「こんな園で仕事ができるなんて最高に嬉しい。」と思ってすぐにお受けしました。そんなことで、今度は幼稚園教諭として再び保育の現場に立つことになりました。

独身時代にやっていた保育では、子ども達にひとつのことをみんな一緒にやらせていました。それはそれでいろんなことをできるんですが、子どもがやりたくない時にもみんな同じようにやらせなくてはいけないので、私はそれに違和感を感じていました。でも今度の園では、いろんなメニューがたくさんある中から子ども達は自分で好きなことを選べて、しかもそれをずっとできるんです。

みなそれぞれ違うことをやっているんだけど、すごい楽しそうなんですね。やりたいことをやりたい時にできるようになると無駄な時間もなくなるし、集中力が違って、難しいことも一気にできるようになるんです。それを見ていて、「ほんとに人って成長するんだな」って実感しました。そして「絶対こっちの方がいい」と確信しました。

不人気園の園長になる

10年前、ある園に園長として赴任することになりました。そこは今までとは全然違う幼稚園で、どちらかと言えば不人気の、毎年人数が減っていくような幼稚園でした。しつけの厳しい園で、先生達は子ども達に「さあこれをやりましょう」って一斉にやらせていました。

前の幼稚園の職員室では、色んな先生と「あの子こうだったね」とか盛り上がってげらげら笑い合っていたのですが、赴任した園の職員室では、先生方の「あの子が気になるわ」とか「あの子は問題だ」とか、そんな会話ばかりでした。

私はそれを聞くに耐えられなくて、「子どもたちはみんなそれぞれ頑張っていると思うし、どの子も口にはださなくても本当は頭の中でいろんなことを考えていると思うよ」って言ったんですが、先生達は「そんなのあまいですよ」「あの子は何も考えていないですよ。」と取り合ってもらえません。

私は「言葉や行動には出てこなくても秘めたものがきっとある」って確信していたので、「見えていないものの能力をひろってあげたい」と思いました。でもそれを先生達にどうやって理解してもえるでしょうか?自分自身が勉強をするしかありません。

何を勉強したかというと、まず心理学ですね。それからコーチング。それからNLP、神経言語プログラミングって言う脳の記憶を書き換えるようなやり方です。それからファシリテーションって言って、司会進行をするような講座、精神やマインドを整えるようなスピリチャルな講座にも行きました。

それらで学んだことを教育研修で先生達に色々試していったんですね。先生達が自分でやりたいことをやれるような雰囲気を作るために、「失敗してもいいからやりたいことをやって」「全面的にOKを出すからやっていいいよ」ってずっと言い続けました。

そうしたら先生達もだんだん変わってきて、職員会議でも活発に意見が飛び交うようになってきました。「こうしなきゃいけない」「ここはこういうルールだからこうするしかないよね」っていう言葉が消えて、「こうしたらいいと思います」「やってみたい」って言う前向きな言葉が出るようになりました。

フィンガーペンティングで指を絵の具でぐちゃぐちゃにして身体に塗っていくような遊びは今まで禁止されてきたんですが、それも先生が「やりたい」って言えばやれるようにして、先生自身がまず楽しんで仕事をしてくれるように心がけ、子ども達とやりたいことをどんどん実践していけるようにしました。

先生達が楽しくなってくると、それは子ども達にも伝わりますから子どもたちも楽しくなります。その相乗効果で、どんどんいろんなことができるようになってきたんですね。園の雰囲気も格段に良くなって、最後には行列ができて人が一杯集まってくるような人気の園になりました。そういう結果が出たのが私が赴任して6年目ぐらいです。

「人を育てる、人が輝くってこういうことなんだ」って思いました。「やりたいことをやる」とにかくこれをいろんな人に伝えたいと思いました。それで2年前に会社を作って、今は0歳から3歳までの子を持つお母さんたちに「お子さんと一緒にやりたいことをやろう。こんな遊びがあるよ」って紹介しています。将来は、できれば障がいの子とかお年寄りの人たちにもこのメソッドを伝えていきたいと思っています。

やりたいことがわからない息子にビックリ

うちの3人の子ども達には「とにかくやりたいことをやりなさい」って、ずっとそうやって育ててきました。それで、3人ともやりたいことをやりたい放題やってきたんですが、長男が就職の時、「やりたいことがわからない」って言われたんです。これはすごいショックでした。「やりたいようにやりなさいって言ってきたはずなのに、なんで就職の時にやりたいことがわからないの?」って。

「学校ではこの通りにやりなさいって言われてずっとそうやってきたから、やりたいことがわからなくなった」って。学校のルールにのってやっていても、いざ就職となると自分が見えなくなっちゃうんですね。自分で考えてやりたいことをやるチャンスが与えられないとそれは難しいんですね。

私は今、高校にも行っていて、生徒達に「ほんとにじぶんのやりたいことは何?真剣に考えてみよう」という授業をやっています。みなさんの自分のやりたいことってなんですか?

【学生A】私は学校や地元のクラブで器械体操をしてきたんですけど、小さい時からの夢が保育士でした。私が幼稚園の時に体操教室が楽しくて体操を始めたので、今は「自分で楽しい」って思えることを子ども達にも教えられたらいいなと思っています。

【学生B】私は中学からソフトボールをやっています。身体を動かすことが大好きなので「子ども達にも好きになってもらいたい」と思っています。「小さい時から身体を動かして楽しむのが大事だな」と思って、「幼稚園や保育園の先生になりたい」と思っています。

そう思ってくれてほんとに嬉しいし、あなた達は必ずその通りになれますよ。私がやってきた保育士という仕事もやっぱり体育会系です。身体をずっと動かしている仕事なので、ホントに体力がないと無理なんです。長年やっている先生はみな体力もガッツも根性もあります。そういう点では、身体を動かしていることは強みだと思います。

体力も必要ですが、保護者の方にクレームを言われたりもするので、精神的にも強くないと続かないんですね。そこは身体を動かすことを経験しているからこそ強くなれると思うんです。そうやって培ってきたものが本当の自分の強みになっていくと思います。

保育の仕事は、身体を動かして子どもと一緒に心から遊べる、ほんとに楽しい仕事です。そして子どもができるようになった時がすごく嬉しい。それも「やってあげたから」じゃなくて、子ども自身でできるように色々考えてそっと工夫して、子どもに「できた!」って言わせることに醍醐味があると思います。

【OG】私は体育の教員を目指していました。ニチジョは「体育大っぽくない体育大」と感じていました。バリバリの体育大というより、いい意味での緩さがあるというか、私はそこが好きで入りました。結果的に教員にはなりませんでしたが、今は自分の強みを活かしてやりたい仕事をやれていると思います。

自分の強みを活かして仕事でやりたいことをやるっていうのは最高にいいと思います。とにかく楽しむということがテーマです。そのためにはやっぱり、まず自分自身が毎日を楽しむことです。特に学生時代4年間の間に、いろんなことを経験して楽しいことをたくさんやっておいてください。遊びの経験が豊富な人ほど、子ども達と一緒に遊べますよ。

なりたい自分になるための秘訣

最後に、やりたいことをやってなりたい自分になるための秘訣を、ちょっとだけ皆さんにお教えしますね。まず、自分で自分がいいなと思うところを見つけてください。なんでもいいのでできるだけたくさん見つけてください。次にお友達にお願いして、他人から見た自分のいいところをあげてもらってください。これをお互いにやってみてください。

そうすると、自分で思っていたことだけではなく、自分が今まで気づかなかった自分の強みも発見できます。これが大事なんです。そうやって、なんでもいいので、とにかく自分の強みを見つけることです。そして、そういう自分のことを好きになってください。自分のことを大好きになって自分の強みをいっぱい持てば、必ず他人のいいところも見えるようになります。

次に将来なりたい自分を描いてみてください。大事なのはそれを家族や友達にも表明することです。自分の夢を他人に語ることは勇気のいることですが、他人に言うことで自分の背中を押されることになります。たとえその夢が実現できなくても、その夢を実現するためにした努力は決してむだになりません。絶対に他のことにもに役だってきます。

なりたい自分になるために、是非、自分の持っているものを最大限に活かしてください。そして人生を楽しいものにしてください。それが、私が今日いちばん伝えたいことです。

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