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ソフトボール日本代表からボートレーサーへ

西舘 果里 さん + 向井田 真紀さん

公益社団法人日本モーターボート選手会所属 第113期生ボートレーサー


本日のお客さまは、女子ボートレーサーの西舘果里さんと向井田真紀さんです。西舘さんは、ソフトボール日本代表として活躍された後、ボートレース界に転身されました。そして同期の向井田さんは、なんと保育士からボートレーサーになられたという、異色の経歴をお持ちのおふたりにお話をうかがいます。
<2015.07収録>

【司会】今回もトークセッション形式で進めていきます。皆さん、ボートレースって知っていますか?けっこういますね。見に行ったことがある人は? 3人ぐらい...、ありがとうございます。ではまず最初に、西舘選手がボートレーサーになるきっかけは何だったんですか?

【西舘】私はもともとソフトボールをやっていて、厚木商業高校を卒業して「ルネサスエレクトロニクス高崎」という実業団に入団しました。その頃の夢は、ソフトボールでロンドンオリンピックに出ることでした。ところがソフトボールがオリンピックの対象競技から外されて目標を失ってしまい、自分自身のコンディションにも悩んでいました。

帰省途中にふと立ち寄ったボートレース場でその迫力に圧倒され、女性レーサーが男性と対等に戦っているのを見て衝撃を受けました。自分もボートレーサーになりたいと思い、シーズンが終わると退団を願い出て、翌年ボートレーサーの学校「やまと学校」へ入学しました。そこで1年間訓練を受けて、昨年末にボートレーサーとして新たなスタートを切ることができました。26歳になっていたのでボートレーサーとしては少し遅いスタートだったのですが、今は新たな目標に向けて頑張っています。

【司】向井田選手にもお聞きしたいんですけど、ボートレーサーになるきっかけは?

【向井田】私は広島県の短大を卒業して、4年間保育士をやっていました。3人兄弟の一番上ですが、一番下の弟がボートレーサーになって、その姿を見て「カッコいい。」と思いました。真ん中の弟と私がほぼ同時期にボートレーサーを目指すことになり、運良く今は3人ともボートレーサーとしてやっています。

【司】兄弟同士で戦うこともあるんですか?

【向井田】それはまだないです(笑)。

【司】保育士の仕事とは真逆な気もしますが?

【向井田】そうかも知れません。保育士の頃はのんびり子どもと過ごす毎日でした。今は、新人は全体の仕事もしないといけないのでレース場をいつも走り回ってます。自分の時間を作るために、少しでも早く仕事を終わらせるようにしています。

【司】その辺は部活と一緒ですね。それにしても、ボートレーサーは男女の区別なく戦えるのはすごいですね。

【西舘】私も最初は、あのボートを自分と同じ女性が乗りこなしていることにびっくりしました。女性が男性と同じフィールドで戦えるスポーツは、テニスやバドミントンの混合以外ではあまりないと思います。自分にとっても男性に勝てることが魅力というか、そのために頑張ろうって思えます。

【司】見る側からのボートレースの魅力って、一言でいうと何ですか?

【西舘】やはり迫力とスピード感でしょうか。レースに賭けるにも、競馬と違ってボートレースは6艇だけなので組み合わせが決めやすく、誰もが楽しめる公営ギャンブルだと思います。

【司】今日はボートレースが大好きな学生も来ているんですよ。ボートレースを知ったのはどういうきっかけだったの?

【学生】私が通っていた高校の先生の同級生が、東京支部のボートレーサーで、映像を見て「カッコいい!」と思って、多摩川のボートレース場に行っていました。

【司】女性レーサーは何人ぐらいいるんですか?

【西舘】今、全部で1,600人程のレーサーがいて、そのうちの1割、200人くらいが女性です。

【司】実際のレースはどのように行われるのでしょうか?

【西舘】「ターンマーク」というのが水面に浮かんでいて、それを回って1周600mのコースを3周して順位を決めます。決められた時間内にスタートラインを通過する「フライングスタート方式」が取られていて、ターンマークをいかに早く旋回するかが勝負のポイントです。

【学生】勝つために大事なことは何ですか?

【向井田】インについて逃げ切りをするとか、とにかくスピードでアウトからまくっていくとか、周りを見ながら先行艇の内側を差していくとか、色んな作戦があります。後ろにつくと先行艇が起こす引き波の影響を受けてしまうので不利なんですが、時には大逆転も起こるので最後まで気が抜けません。

選手それぞれ乗り方のスタイルが違っていて、テクニック重視の人もいれば、ボートの整備を重視する人もいます。私は今、テクニックを一生懸命覚えています。

【司】ただ乗るだけじゃなく自分で整備もしなくてはいけないんですか?

【西舘】乗る前にモーターを自分で整備します。エンジンのネジが1個でも緩んでいたら馬力が出なかったり、最悪は出艇できなかったりするので、メカニック的な知識も必要です。自分に合ったモーターにしていくために、自分でプロペラの形を変えたりもします。

【学生】プロペラって何ですか?

【向井田】ボートのモーターの下にプロペラが付いていて、そのプロペラを回して前に進むんです。乗りやすいプロペラの形は人によって違うので、自分のモーターが決まると、プロペラを叩いて形を変えていきます。乗っては叩いて、乗っては叩いてを繰り返し、自分がレースをしやすい形に持っていきます。

【学生】自分が乗るボートはどうやって決めるんですか?

【西舘】レース前にクジを引きます。なのでレースは、メカニックの技術、レースのテクニック、それに運の掛け算になります。

【司】前のレースですごくいいモーターにしておいてくれたら、そのままいけちゃうとかは?

【西舘】その日によって水温も湿度も違うし、走っていると段々エンジンがあったまってきて部品が削れたりするので調整は必ず必要です。ベテランの選手なら1日とかからずに仕上げられますが、私はまだ時間がかかってしまいます。

【司】観察して分析して結果を出す、まさにPDCAサイクルですね。

【学生】レースに勝つには、マシンの性能が重要なのかそれともテクニックなのか、どっちですか?

【向井田】エンジンがいくら良くても勝てるわけではありません。ボートが自分に合っているかどうかが大事で、そのためにプロペラをいじったりします。ターンをするにも、モンキーターンと言って、フォームひとつで波をうまく越えられたり、波に負けちゃったりするので、テクニックも重要です。

【学生】筋肉も鍛えたりするんですか?

【西舘】私は今、足の外側を鍛えています。ソフトボール時代は、どちらかというと足の内側、内転筋を絞る動きが多かったのですが、ボートは足を突っ張って外に投げ出されないような力が必要なので。

【学生】どんな人がレーサーになるんですか?

【西舘】女性はチアリーディングや新体操をやっていた人もいます。ダンス系の人も多いし、バスケットボールやソフトボール、色んなスポーツから来ています。全然スポーツをやっていなかった人もいますし、本当に色んな人が選手になっています。

【司】調べてみると、日本女子体育大学からはまだ1人もボートレーサーになってないんですよ。二階堂学園からは1人いらっしゃいました。50代の方でした。ボートレースって、そんなに長くできるんですか?

【西舘】50過ぎの女子レーサーもたくさんいます。怪我さえしなければ長く続けられるスポーツなんです。

【学生】男性と女性とでは違いますか?

【西舘】男性レーサーは整備士上がりの人もけっこういて、メカニックは男性の方が強そうな気がしていました。でも意外に女性レーサーの方が最終日の最終レースまでプロペラをいじっていることが多いらしいんですよ。

【司】兄弟で情報交換とかもしますか?

【向井田】家では、ボートの話はけっこうしますね。レースを親が録画してくれて、先輩の弟に見てもらいアドバイスを受けたり、訓練にも一緒に行っりします。

【司】訓練というのは、どこでどんなことをしているんですか?

【向井田】私は地元が広島県なので宮島のレース場で、レース開催期間中の毎朝2~30分ぐらい、同じ支部の人たちと練習に行って旋回を先輩に見てもらったりしています。

【西舘】東京は騒音問題があるので、朝早くにボートを出すことはできないんです。だからレースの最初と最後の日に集中してやっています。それ以外の時はプロペラを叩いたりしています。

【学生】どこでレースをやるか自分で選べるんですか?

【西舘】自分では選べません。ボートレース場は全国に24場あって、だいたい出身の地元の支部に入るので、本部から仕事を斡旋してもらいます。北は群馬、南は長崎まで、飛行機や新幹線を乗り継いで色んなところでレースをして、また地元に帰ってきて練習をするというサイクルです。

【司】レースをやっている間はどこにいるの?

【西舘】レース期間は外部と接触はできないので、レース場と決められた宿舎との行き来だけです。1カ月3本レースがある人もいれば、1カ月1本の人もいて、クラスによって違います。忙しい人は2日休んでまた次のレース場に行くとかで、家に帰れるのは月に数日だけです。

【司】レースの成績は給料に影響しますか?

【向井田】反映されます。1着の賞金、2着の賞金っていうのが決まっているので、6着ばっかりだと、一節間の獲得賞金は低いし、1着をたくさん取れば獲得賞金は高くなります。

【学生】それは新人でも同じ条件ですか?

【向井田】クラスに関係なく賞金額は同じです。

【司】最低保障給みたいなものはあるんですか?

【向井田】ありません。給料は賞金が全てです。

【司】怪我したらどうなるんですか?

【西舘】怪我したら走れないので給料はゼロです。ただ共済制度があるので、入院費などの補償はあります。

【司】厳しくハッキリした世界ですね。整備の話とか聞いてもすごく奥が深い感じがします。

【学生】ボートレーサー同士の結婚ってあるんですか?

【西舘】今、200人の半分ぐらいが結婚していて、その半分ぐらいがボートレーサー同士で結婚しているようです。やっぱり男女混合でレースすることが多いので。

【司】自分が引退しても旦那さんがどんどん稼いでくれればいいですよね。しかも家にいないんですよ。

【学生】(笑)

【西舘】私と同じくらいの若手レーサーでも、トップは獲得賞金が1億円を超えていたりする人もいるので、夢のある仕事だとは思います。

【司】普通の人だと大学卒業しても、初任給でたぶん年収200万円台だと思うんです。それから比べるとかなりもらえるので、金銭感覚とか狂ってしまいませんか?

【向井田】私は保育士をしていたので、普通の人と金銭感覚はそんなには変わらないと思うんですけど、もし高校を出てすぐレーサーになって賞金をたくさんもらっていたら、金銭感覚は違うんだろうなと思います。

【学生】結婚して子どもができたら、途中で休んだりできるんですか?

【向井田】産休もとれます。ただその間はレースに参加できないので賞金は入って来ないですが。産休をとっても登録はなくならないので復帰することはできます。実際にママさんレーサーもけっこういます。

【司】レース中は子どもを育てられないからどうしているんですか?

【広報】今、女性のトップ選手でお子さんがいる方は、旦那さんが主夫をやっているみたいです。奥さんの方がずっと稼ぐので(笑)。

【学生】すごい!

【司】ヘルメットや服は支給ですか?

【向井田】服は支給されますが、ヘルメットは個人持ちです。ちなみにここに載っているヘルメットは、選手が自分でデザインしてオーダーしたものです。

【司】レーサーの写真集がありますので見てください。みなさん、細マッチョですね。

【学生】モデルみたい。

【学生】可愛い!

【学生】すっごい!めっちゃ。可愛い。

【司】なぜか女子の方がウケてます(笑)。

【学生】どうやってレーサーになれるのか教えてください。

【向井田】やまと学校というのが福岡県にあって、そこで1年間かけてボートの操縦方法や、エンジンの整備、プロペラなどモーターのことを学びます。全寮生活で、朝6時に起きみんなで体操をして、この時間までに何をするとか、1日のスケジュールはきっちり決まっています。学校を卒業するとレーサーとしての登録をもらえます。

【学生】応募資格が42キロ以上50キロ以下とありますが、体重は50キロ以下をキープしなきゃいけないんですか?

【学生】私、無理だ(笑)。

【西舘】やまと学校に入るには、女子は50キロ以下が絶対条件です。体重は頑張れば意外にいけますよ。自分だけが頑張るわけじゃなくてみんなも頑張るので、自然とモチベーションは上がっていきます。学校にいる間は、50キロをオーバーしないようにしなければいけません。選手になったらあとはもう自己責任です。体重が重ければ船がその分スピードに乗らないので勝ちにくくはなります。

【学生】爆笑問題がやっているドキュメンタリー番組で、やまと学校のことが出ていましたけど、ちょっと怖そうでした。教官が怒鳴ってました。

【広報】転覆したり危ない面もあるので教官も厳しく指導したり、それなりに体育会系ではあります。選手になって整備を怠ったりネジを締め忘れたら大変なことになるので、そういう面は厳しく指導されます。でも部活をやっている皆さんなら耐えられるんじゃないかと思います。みんなボートレースなんてやったことないので一から学校で学び、その点ではスタートラインが一緒に始められる競技です。

【学生】学校でいちばん衝撃的だったことは何ですか?

【西舘】携帯電話が持てないことかな。公営のギャンブル競技なので、八百長とかがないよう、レースの間は外部とは一切連絡が取れなくなります。学校はその訓練の場所なので、1年間携帯電話が使えません。

【学生】うゎ。

【西舘】でも意外に、なければないで生活できるんだなって思いました。ちなみに寮は個室じゃなく6人部屋です。365日常に他人の顔を見ているので、1人の時間がないのがちょっと大変でした。

【向井田】私も1人の時間がないっていうのは、思った以上に精神的にきました。

【司】今、大学の寮が4人部屋なので、そういう環境は似ているかもしれませんね。

【西舘】お互いライバル同士ですけど、1年間辛い訓練を乗り越えて卒業する頃には、お互い大切な仲間になっています。今日も彼女が広島から来てくれました。

【学生】やまと学校に入るのは難しいんですか?

【向井田】試験は3次まであります。1次試験は全国各地でやっていて、高校入試レベルぐらいの試験と体力試験。2次はやまと学校で、ボートを操縦したり長距離、短距離、動体視力とか。あと何だったっけ?

【西舘】あと、反射神経とか。光がついたらバン!ってジャンプするかとか、指先の感覚とか。レースになったら視野も広くないといけないし、脳で考えたことをすぐに身体に伝えられないといけないので。

【司】スポーツ推薦もあるんですね?

【西舘】面接を受けて、レース場から推薦をもらって試験を受けることができます。私はスポーツ推薦で入りました。推薦をもらうと一般の人よりはちょっと学校に入りやすいんです。興味があったら調べてみてください(笑)。

【学生】全員卒業できるんですか?

【広報】大体はみんなボートレーサーになって卒業しますが、半年で進級試験があって、そこで適性を見極められます。そこでだいたい1割くらいの人がいなくなります。

【司】適性って具体的に言うとどんなことですか?

【広報】操縦の部分もありますけど、団体生活に向かないとかもあります。選手になると集団で宿舎の生活になるので、上下関係もあるし、コミュニケーションが取れないような子だとやっぱり向かないですね。

他のスポーツだったらアマチュアのトップがプロになったりしますけど、ボートの場合アマチュアがないので、向いているのかどうか全然分からないんですよ。いくら運動神経よくてもボート乗ってみたら以外とダメだったっていう人もいます。

【学生】今後の目標とかあったら聞かせてください。

【西舘】B2、B1、A2、A1と、4つの階級があるんですけど、私たちはまだデビューしたばかりで一番下のB2というクラスです。勝てば上に上がっていけますが、勝たなければずっと下のまま。だからまずはB1に昇格することが目標です。そのためにレースで準優勝や優勝ができるように練習しています。

【向井田】私もまずはB1に上がることが目標です。レース毎に1着から6着まで決まって、1着は10点とか、点数制で勝率が決まるので、なるべく6着を取らないようにするのも毎回の目標です。

【司】今日はソフトボール部がたくさん来ていますね。ソフトボール関係の質問があったらどうぞ。

【学生】ソフトボールとの共通点や違うところはありますか?

【西舘】団体戦と個人戦、そこがもう全く違います。ソフトボールは、監督がいてトレーナーやマネージャーがいるので、自分で計画を立てなくても練習メニューがあり、それをこなしていけばいいけれど、ボートレースは、自分で体調管理をしないといけないし、練習メニューも自分で組まないといけません。

共通点は、試合に臨む気持ちの作り方とかはレースに入る気持ちの作り方と一緒だと思います。あと基本的な身体の芯、みなさんスポーツやっているから分かると思うんですけど、体幹とか軸の作り方はどのスポーツも一緒だと思います。自分自身、そこをもっとリンクさせられたら、もっといいレースができるんじゃないかなって思っています。

レース場に外部の人は入れないので、自分でテーピングも覚えないといけないし、セルフマッサージもします。他のボートレーサーを見ていて、痛くてもアイシングやテーピングをしていなかったりするので、ソフトボールの経験を生かしてそういうところをもっと伝えていけたらいいなと思います。

【学生】厚木商業高校、ソフトボール部の後輩です。先ほど「試合に臨む気持ちは同じ」っておっしゃっていましたが、大会にあたっての気持ちの作り方はどういうようなことをされていましたか?

【西舘】私はセンスがある方ではないので、もうこれ以上出来ないっていうぐらい練習をして、自分に自信をつけて試合に臨んでいました。休みの日でも素振りを毎日夜にしていいイメージで寝る習慣でした。これだけやったからあとはどんな結果であっても後悔はない、いつもそんな気持ちで臨んでいました。

それは今でも変わってなくて、これだけプロペラを叩いたから大丈夫って思えるぐらい練習してレースに臨んでいます。

【司】向井田選手はレースの前に何か決まったことしますか?

【向井田】私はレースの直前はすごい緊張してしまうんです。緊張していたらやっぱり身体も硬くなるので、上手にボートのハンドルが切れなかったりします。無理やり落ち着かせようと思ってさらにドキドキしちゃったり、緊張したまま行く時もあったり。やっぱりリラックスした方がいいので、レース前はちょっと歩いて気分転換をしたり色んなことを試しています。

【司】2人とも結婚してママになっても続けたいですか?

【西舘】今はとにかくレースで強くなりたいっていう気持ちが強いので、結婚のことは100パーセント考えられないです。

【司】もし子どもができたら自分で育てたい?

【向井田】はい。それは自分の中のもうひとつの夢でもあります。

【西舘】多摩川のボートレース場があるんですけど、そこで来月参加するレースあるので、良かったら見に来てください。未成年の方は舟券は買えないですけど、スポーツとして見るだけでも面白いと思うので是非。

【司】西舘選手、向井田選手、今日は本当にありがとうございました。

【学生】(拍手)